はじめまして、漫画家・イラストレーターのサノマリナと申します。
- 『まんがでよくわかるエッセンシャル思考』
- 『【コミック版】世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?』
などのビジネスコミックの作画を手がけています。
本日はこの”ビジネスコミック”という分野のことについて紹介したいと思います。
ビジネスコミックとは今マンガで盛り上がっている分野の一つで、「マンガでわかる~」と冠のついた、ビジネス書をマンガ化したものや大人向けの学習マンガのことです。
書店のビジネス書コーナーには、今ではたくさんのビジネスコミックが並んでいます。
描いてみたいと思っている漫画家さんやイラストレーターさんも多いのではないでしょうか。
この記事では、そんなビジネスコミックの仕事とはどのようなものか、描く際のポイントなどを織り交ぜて紹介したいと思います。
仕事の進め方
1.依頼
出版社から直接依頼が来ることは少なく、マンガ作りのノウハウを持つ編集プロダクションから依頼が来ることが多いです。
マンガのページ数は平均80~100ページで、制作期間は3~4ヶ月ほど。
原稿料はページ単位の場合と、まとめていくらという場合があります。
印税アリの場合とナシの場合がありますので、クライアントに聞いてみるのがよいでしょう。
2.ネーム
ビジネスコミックは専門的な内容のことが多いので、大体はシナリオライターがシナリオを作ります。
漫画家はそのシナリオを元にマンガの設計図となるネームを作ります。
出版社のチェックも入るので、それなりに描き込んだネームのほうがよいです。
3.下絵
先方からの絵に対する修正があれば、この時点までに入れてもらいます。
↑私の場合、時間短縮のためにネームは下絵としてそのまま使えるものを作成することが多いです。
4.ペン入れ、仕上げ
あとは描いて仕上げるだけです!
使用ソフトは「CLIP STUDIO PAINT EX」です。
全行程デジタルのほうが先方から修正があった時に直すのが簡単です。
5.カバーイラストの制作
ペン入れ、仕上げと並行して進めることが多いです。
ビジネスコミックを描く際のポイント3つ
ビジネスコミックを描く上で私が意識しているポイントを3つ紹介します。
1.絵柄は好感度重視で
商業マンガであれば、『ONE PIECE』や『カイジ』など、一度見たら忘れられない個性的な絵柄は大きな武器となります。
しかし、ビジネスコミックの場合に重要となるのは絵柄の好感度です。
ビジネスコミックの主人公の多くが女性に設定されているのは、想定している読者のメイン層が女性だからです。
必然的に絵柄も女性に好まれるようなもの、つまり、かわいい、キレイ、清潔感がある、そういう絵柄になります。
これは多くの女性が少女マンガだけ読むわけではないように、必ずしも少女マンガのような絵柄というわけではありません。
Amazonのビジネスコミックランキングに入っている本のカバーイラストを見てみるとわかるかと思います。
2.読者は自分のファンなわけではないと心得る
マンガを描いている人は「見てもらってほめてもらいたい!」と思っている人がほとんどでしょう(私を含め)。
しかし大体の場合、ビジネスコミックを買う人はテーマに興味があって買うのであって、作画者のファンだから買うわけではありません。
商業マンガでは作家の独自性が求められ、そこにファンもつきますが、ビジネスコミックではシナリオをいかにわかりやすく正確にマンガに起こせるかが重要で、それができたとしても別にファンはつきません。
「読みづらいな」と思われたら読者はそこで読むのをやめてしまい、「買って損した」なんてレビューがつくことも…つらい。
そうなったらクライアントである出版社にも申し訳が立ちません。
私の場合、自己顕示欲は少々抑えめにして、より読者の目を意識し
- わかりづらくなっていないか
- 読みづらくなっていないか
確認しながら描いています。
3.わかりやすさを追求する
2とも関連しますが、読者は「わかりたい」のでマンガでそのテーマを読んでいます。
ですので、こちらはマンガの特性を活かして極力わかりやすく説明することが大事です。具体的には、
- セリフを多くしすぎない
- コマ割りや構図にメリハリをつける
- 解説図や比喩表現を工夫する
…の3つです。
■セリフを多くしすぎない
セリフだらけだったら本を読んでいるのと変わりません。
セリフが多くなりそうだったら、フキダシを2個に分けたりします。
■コマ割りや構図にメリハリをつける
ビジネスコミックの特長は、説明だけではなくストーリーの中でテーマを解説しているところです。
登場人物の喜怒哀楽に合わせて、コマ割りを大胆にしたり、解説が続くシーンでは単調にならないよう構図に変化をつけたりを意識します。
ただし、やりすぎには注意です。
■解説図や比喩表現を工夫する
セリフで説明するだけより、そこに適切な解説図やマンガだからこそ描ける比喩表現が入っていると、イメージとして読者の記憶にも残りやすくなりま
す。
↑「武器」というセリフから連想して、剣と盾を人物に持たせました。現実には無理ですが、マンガだからできる表現です。
ビジネスコミックの仕事をゲットするには?
最後に、ビジネスコミックの仕事をどうやってゲットするか、営業方法をお伝えします。
「仕事の進め方」のパートでも書いたように、実際の制作を担っているのは編集プロダクションです。
気になったビジネスコミックの奥付に書いてある編集プロダクションにコンタクトを取り、「ビジネスコミックが描きたい」と伝えてみましょう。
ただし前提として、
- 絵柄がビジネスコミックに向いているか
- 出版レベルのマンガの基本ができているか
ということはありますので、編プロの編集者に聞いてみるのがよいかと思います。
書籍の広告効果は高く、1冊ビジネスコミックを出すことができれば、それを見た他の出版社から別のビジネスコミックの依頼が来るということもあります。
私の場合は少女マンガのようなタッチでパンフレット等の広告マンガを描いていたところ書籍用のマンガを描いてみないかと声がかかり、そこからビジネスコミックを多く手がけるようになっていきました。
まずは腕を磨き、「この人なら描ける」と思われることです。
イラストレーターの持ち込み営業のやり方をステップ毎に詳しく解説
終わりに
いかがだったでしょうか。
堀江貴文氏も「圧倒的に時間効率のいいメディア」としてビジネスコミック業界に参入したように、これからもビジネスコミックを描く漫画家の需要は増えていくと考えられま
す。
漫画って悪いことひとつもないよね。 pic.twitter.com/K1dzmZSLAp
— 櫻田潤🎨インフォグラフィック・エディター (@jun_saq) 2018年3月2日
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