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イラストの仕事はどこから来るのか|単発で終わる人と、何度も頼まれる人の差

机の俯瞰の線画。左から封筒と書類が流れ込んでくる
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イラストの仕事をしていて、こんな感覚はないでしょうか。

  • 描く力は上がっているはずなのに、収入がいっこうに安定しない
  • 件数はこなしているのに、毎月ゼロから営業している感じが消えない
  • 一度きりの依頼ばかりで、同じ相手から次が来ない

もしそうなら、腕の問題ではない可能性が高いです。実は、稼げているイラストレーターとそうでない人を分けているのは、うまさよりも「仕事がどこから来ているか」だということが、調査の数字にはっきり出ています。

この記事では、まずイラストの仕事が実際どの経路から来ているのかをデータで確認します。そのうえで、何度も声がかかる人がどこに立っているのかを、当サイトを運営する制作会社・株式会社粕田屋が実際に受けてきた案件から見ていきます。

先に結論を言うと、鍵は「繰り返し発注してくれる相手を持てるかどうか」です。そしてその相手は、多くのイラストレーターが探していない場所にいます。

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データ|イラストの仕事は、実際どこから来ているのか

フリーランス白書2025の調査による、イラストの仕事の獲得経路の棒グラフ

感覚の話にしないために、まず調査の数字を見ます。フリーランス協会のフリーランス白書2025(有効回答1,053人)によると、仕事を見つけている経路は次のとおりです(複数回答)。

  1. 人脈(知人の紹介を含む)|72.8%
  2. 過去・現在の取引先|61.0%
  3. 自分自身の広告宣伝活動(ウェブ・SNSなど)|33.4%
  4. エージェントサービスの利用|25.3%
  5. クラウドソーシング|23.3%

ここまでは、よく見る数字かもしれません。大事なのは次です。

同じ調査で「最も収入が得られる仕事は、どこから見つけたか」を1つだけ選ぶと、順位はこうなります。

  • 人脈|35.6%
  • 過去・現在の取引先|29.9%
  • エージェントサービスの利用|12.4%
  • 自分自身の広告宣伝活動|7.7%
  • クラウドソーシング|6.0%

設問の形が違うので単純な引き算はできません。そこで「その経路を使っている人のうち、何割がそこを一番の稼ぎ口に挙げたか」で見てみます。

  • 人脈・過去の取引先・エージェント|いずれも約5割
  • 自分自身の広告宣伝活動|約2割
  • クラウドソーシング|約4分の1

つまりクラウドソーシングは、件数は取れても収入の柱になりにくい。一方で「最も稼げる経路」に人脈か既存の取引先を挙げた人は合わせて65.5%、3人に2人にのぼります。

読み替えると、こうなります。収入を安定させている人は、新しい相手を探し続けているのではなく、すでにつながった相手から次をもらっている。

「単発で終わる人」と「何度も頼まれる人」を分けているもの

では、どうすれば「すでにつながった相手から次が来る」状態になるのか。ここで見落とされがちなのが、発注元そのものの性質です。

イラストの発注元は、大きく2種類に分けられます。

  1. 単発で終わりやすい発注元|個人のお客さま、飲食店の看板、同人誌の表紙、企業の周年記念など。その人・その会社にとって「一生に何度もない発注」なので、仕上がりに満足してもらえても、次の依頼そのものが発生しません
  2. 繰り返し発注する発注元|イラストを日常的に必要としている会社。広告、販促物、記事の挿絵など、毎月のように絵が要る立場の相手です

ここが決定的です。単発で終わる人は、腕が足りないのではなく、単発しか発注しない相手とばかりつながっていることが多い。どれだけ良いものを納めても、相手に次の予定がなければ次は来ません。

逆に、繰り返し発注する相手を1社でも押さえられれば、白書が言う「過去・現在の取引先」の枠に自分が入ります。営業のかけ直しから解放されるのは、この瞬間です。

ではその相手はどこにいるのか。多くのイラストレーターが、そこを探していません。

繰り返し発注する相手は「制作会社」に集まっている

広告主から広告代理店、制作会社を経てイラストレーターへ仕事が流れる経路図

広告やウェブの絵は、広告主が直接イラストレーターに頼んでいるわけではありません。間に制作会社が入り、その制作会社が外部のクリエイターに配分しています。

これがどのくらいの割合なのか、当サイトを運営する制作会社・株式会社粕田屋の案件で数えてみました。過去の制作実績から無作為に抽出した150件について、「粕田屋に直接発注してきた相手は誰か」という商流で分けると、こうなりました。

  • 制作会社・仲介から受けた案件|112件
  • 広告代理店から直接受けた案件|33件
  • 広告主から直接の問い合わせ|5件
無作為に抽出した150件の商流の内訳。制作会社112件、広告代理店33件、広告主から直接5件

つまり150件中145件が、誰かを経由して届いた仕事です。広告主が直接イラストレーターや制作会社を探してきたケースは、全体の3%ほどしかありません

これは受ける側にとっては朗報です。仕事が「制作会社」という決まった通り道を流れているということは、そこに立てば、複数の広告主の案件が繰り返し流れてくるということだからです。

さらに、この立ち位置には実務上の利点があります。

  1. 企画や構成が固まった状態で来る|何を描くかが決まっているので、手を動かす部分に集中できます
  2. 進行を相手が管理してくれる|締切の設定、確認の催促、社内承認の待ち時間の調整は、制作会社の仕事です
  3. 支払いが安定している|会社間の取引なので、条件が決まっていて期日どおりに入ることがほとんどです

直接受けたほうが取り分は大きくなりますが、決まっていないことを決めてもらう交渉、見積もり、契約、請求まで全部自分でやることになります。それは絵を描く時間ではありません。まずは制作会社経由で実績と進行の感覚を作るほうが、結果的に早い。

その制作会社が、いま探しているのは誰か

ここからが本題です。制作会社に登録しているイラストレーターは、実はたくさんいます。絵がうまい人も大勢います。その中で、繰り返し声がかかる人には共通点があります。

理由は、制作会社の仕事の中身にあります。1本の広告動画は、だいたいこの工程でできています。

  1. 企画・シナリオ
  2. 絵コンテ
  3. イラスト・デザイン制作
  4. アニメーション制作
  5. 音の仕上げ

イラストだけを担当する場合、関われるのは③の1工程だけです。そこが終われば、その案件でのあなたの出番は終わります。

ところが③と④の両方をお願いできる人は、1案件に長く関わります。制作会社から見れば、受け渡しの回数が減り、絵の意図が動きまで一貫するので、単純にありがたい。だから次も声をかけます。

そして需要の側も伸びています。国内の動画広告市場は2025年に8,855億円(前年比122.2%)と推計され、2026年には1兆円を超える見込みです(サイバーエージェント/デジタルインファクト調べ)。絵が要る場所が、静止画から動画へ移っているということです。

「イラストレーターの仕事が減った」と感じる場面が増えているとすれば、絵の需要が消えたのではなく、絵が必要とされる場所が動いたと見るほうが実態に近いかもしれません。

アニメーションは「転向」ではなく、イラストの仕事の延長

ここで身構える方が多いのですが、絵を捨ててアニメーターになる、という話ではありません。むしろ逆で、絵が描けることが前提の仕事です。

広告アニメーションで使う動きの大半は、実は次の3つの組み合わせでできています。

  1. 移動|位置を変える。文字やキャラが画面外から入ってくる
  2. 拡大・縮小|大きさを変える。商品に寄る、文字が飛び出す
  3. 不透明度|現れる・消える。ふわっと出る、パッと消える

作画枚数を積み上げるテレビアニメとは、必要な技術がまったく違います。自分が描いた1枚の絵を、パーツに分けて動かす。それが広告アニメーションの基本です。

そしてイラストレーターがすでに持っているものが、そのまま効きます。

  • キャラクターを一貫して描ける|複数の場面で同じ人物を破綻なく描けるのは、簡単なことではありません
  • 画面のレイアウトを組める|どこに何を置くと目が行くかの判断は、そのまま動画の画面設計です
  • クライアントの要望を絵に落とせる|伝えたいことを形にする訓練は、すでに積んでいます

足りないのは動かす手順だけで、しかも覚える範囲は思ったより狭い。詳しくは最初の1ヶ月でやることで具体的に書いていますし、絵が動くと仕事の種類がどう変わるかはこちらの記事にまとめました。

制作会社が「次も」と思う人の共通点

ここは発注する側から見た正直なところです。登録してくれたクリエイターのうち、繰り返し声をかける相手は一部に偏ります。そして分かれ目は、腕だけではありません。

  1. 返信が速い|内容より速さです。「確認して明日お返事します」の一言が当日に来るかどうかで、次に声をかけるかが変わります
  2. できないことを、早い段階で言う|締切の直前に「できませんでした」が一番困ります。無理そうだと分かった時点で言ってくれる人が、結局いちばん信頼されます
  3. 作例が「広告の形」をしている|長い作品より、15秒から30秒で、伝えたいことが1つに絞られたもののほうが、発注側は判断しやすい
  4. 直しの理由を聞ける|「この直しは、誰の、どの意図から来ていますか」と聞ける人は、2回目以降の精度が上がります

逆に言えば、この4つは技術の習熟を待たずに、今日から満たせます。「何度も頼まれる人」との差は、多くの人が思っているより技術寄りではありません。

明日からできる3つのこと

大きく方針を変える必要はありません。順番はこの3つです。

1|繰り返し発注する相手の一覧を作る

アニメーション 制作実績」に自分が関わりたい業種を足して検索してください。制作会社の実績ページが並びます。そこに載っている動画が、その会社の得意分野そのものです。作風が自分と近い会社を10社ほど控えると、それがそのまま営業先の一覧になります。

なお、制作会社の「クリエイター募集」「パートナー募集」の窓口は、求人サイトには出てきません。サイトの一番下までスクロールして探すのが早いです。

2|短い作例を1本だけ作る

長い作品は要りません。すでに持っている自分のイラストを1枚使い、パーツに分けて数秒動かす。それを書き出して1本の動画にするところまでやります。未完成のまま次に行かないことだけが条件です。

3|すでにつながっている相手に伝える

白書の数字どおり、一番強いのは既存のつながりです。イラストの仕事をもらったことがある相手に「動かせるようになりました」と短い作例を送るだけでいい。新規開拓より、はるかに反応が返ってきます。

この順番で進めるための学び方を、現場の進め方ごと整理したものとしてAdAnimeSTUDIOのような講座を使う手もあります。

まとめ

冒頭の「毎月ゼロから営業している感じ」に、答えを置きます。それは腕の問題ではなく、単発しか発注しない相手とつながっているからです。

  1. 調査では、「最も稼げる経路」に人脈か既存の取引先を挙げた人が約65%。クラウドソーシングは件数は取れても柱になりにくい
  2. 収入を安定させる鍵は、繰り返し発注する相手を持つこと
  3. その相手は制作会社に集まっている。粕田屋の案件でも150件中145件が経由の仕事
  4. 制作会社が繰り返し声をかけるのは、イラストと、その先の動きまで任せられる人
  5. 広告アニメーションは絵が描けることが前提の仕事。移動・拡大縮小・不透明度の3つから始められる

描けることは、すでに大きな資産です。あとはそれを、仕事が繰り返し流れている場所に置くこと。順番を変えるだけで、見える景色はかなり変わります。