アニメーションに興味はあるのに、こんな状態で止まっていませんか。
- After EffectsやPremiere Proなど、どのツールを使えばいいか分からない
- ツールを購入・契約してみたものの、機能が多すぎて何から触ればいいか分からない
- 「勉強しよう」と思ってから、もう何ヶ月も経っている
- 始めても、最初の1本が完成する前に力尽きそう
もしそうなら、やり方の順番を間違えているだけかもしれません。アニメーションは、いきなり全部を覚える必要はありません。最初の1ヶ月でやることは、実はかなり絞れます。
前回の記事では、絵が「動く」と仕事の種類が変わるという話をしました。今回はその続きとして、では実際に、何から始めればいいのかを、最初の1ヶ月のロードマップに落として具体的にお話しします。
始める前に|最初にやってはいけないこと

やることの前に、やってはいけないことから先に潰しておきます。挫折する人は、だいたい次の2つのどちらかをやっています。
NG① いきなり高機能ソフトの全機能を覚えようとする
アニメーション用のソフトは機能が非常に多く、全部を順番に学ぼうとすると、それだけで数ヶ月かかります。そして、覚えている途中で「何のためにやっているんだっけ」となって手が止まります。
実際、独学でアニメーションソフトに挑戦した人の多くが、機能の多さの前で途中で諦めてしまう、というのはよく言われることです。道具を極めることが目的になってしまうのが、最初の落とし穴です。
NG② 最初から長い作品を作ろうとする
「せっかくなら1本ちゃんとしたものを」と、30秒や1分の作品をいきなり目指すパターンです。完成する前に力尽きます。
この2つに共通するのは、「道具」や「規模」から入っていることです。順番が逆です。最初に手をつけるべきは、道具でも長さでもありません。
なぜ今、始める価値があるのか
本題に入る前に、「今やる意味があるのか」だけ数字で確認しておきます。
企業が広告でイラストや動画を使う場所は、この数年ではっきり動画側に移りました。特に、スマートフォンで見る縦型のショート動画が急速に増えています。
ある調査では、Web広告を出している企業の58.7%が、すでに縦型の動画広告を出稿しているという結果が出ています。さらに、そのうち約6割(61.5%)が「他のWeb広告より効果が高い」と感じている、というデータもあります。
出典:PLAN-Bマーケティングパートナーズ「SNS縦型動画広告に関する調査」(2025年11月・Web広告担当者196名)
つまり、動く絵をつくれる人への需要は、これから減るどころか増えていくということです。そして今はまだ、「絵も描けて、動かせる人」が現場で足りていない時期です。始めるには、悪くないタイミングです。
最初の1ヶ月ロードマップ|週ごとにやること

ここからが本題です。最初の1ヶ月を、週ごとに4つのステップに分けます。それぞれ「これだけやればいい」というものだけを置きました。
1週目|動きの「3要素」を知る
道具の前に、まず動きの種類を知ります。広告アニメーションで使う動きの大半は、実は次の3つの組み合わせでできています。
- 移動(位置を変える)— 文字やキャラが右から左へ動く、画面外から入ってくる
- 拡大・縮小(大きさを変える)— 商品が寄る、文字が飛び出す
- 不透明度(現れる・消える)— ふわっと出る、パッと消える
1週目は、身の回りの広告動画を見て、「今の動きは3要素のどれか」を当てるだけで十分です。手はまだ動かさなくてかまいません。目を慣らす週です。
2週目|手持ちの絵を1枚、動かしてみる
新しく描く必要はありません。すでに持っている自分のイラストを1枚使います。
キャラクターの腕、目、口といったパーツを分け、それぞれに1週目の3要素を当てて動かします。1枚の絵から、数秒の動きが作れます。ここで初めて道具を触りますが、使う機能は「移動・拡大縮小・不透明度」の3つだけで足ります。
3週目|短い完成品を1本つくる
2週目でつかんだ感覚で、5〜10秒の短い完成品を1本作ります。長くしないことが大事です。テーマは何でもいい——自分のキャラが手を振る、ロゴが出てくる、それくらいで十分です。
大事なのは「最後まで書き出して、1本の動画ファイルにする」こと。未完成のまま次に行かないでください。
4週目|見せて、振り返る
作った1本を、誰かに見せます。SNSに上げてもいいし、知り合いに送るのでもいい。そして「どこがぎこちなかったか」を自分で1つだけメモします。
この4週で、「アニメーションが作れる状態」に一度到達するのが目標です。うまさは後からで大丈夫です。
道具は「1つだけ」でいい
「結局どのソフトを使えばいいのか」という質問が必ず出ます。答えは、「最初は1つに絞る」です。
アニメーション用のソフトはいくつもありますが、最初の1ヶ月では、どれを選ぶかより「1つに決めて触り始めること」のほうがずっと大事です。ソフト選びで1週間悩むより、何か1つ触って3要素を動かしてみるほうが、100倍前に進みます。
そして安心してほしいのは、広告アニメーションで実際に使う機能は、ソフト全体のごく一部だということです。学習曲線が急だと言われるのは「全機能を覚えようとした場合」の話で、最初の3要素を動かすだけなら、覚えることはわずかです。
「現場で通用するところまで、最短で届きたい」という人向けに、当サイトを運営する株式会社粕田屋では、広告アニメーションの制作現場の知見をもとにした AdAnimeSTUDIO という講座を運営しています。何を学び、何を後回しにしていいか、順番が整理されているぶん、独学の遠回りを省けます。
なぜ「短い完成品を1本」がそんなに大事なのか
ロードマップで一番強調したいのが、3週目の「短い完成品を1本つくる」です。ここには、3つの理由があります。
- 「作れる」が自信に変わる
頭で分かっているのと、実際に1本仕上げたのとでは、次に進む力がまったく違います。未完成が10個あるより、完成品が1個あるほうが強いです。 - ポートフォリオになる
短くても、動く作品が1本あると、それが「動かせる人」の証明になります。静止画のポートフォリオに動く1本を足すだけで、見え方が変わります。 - 自分の課題が具体的に見える
1本作ると、「動きが速すぎた」「間が足りない」など、次に直すべき点がはっきりします。作らないと、この課題は永遠に見えません。
イラストレーターにとって、これは有利なポイントでもあります。1枚の絵で伝える訓練を積んできた人は、「どこを動かすと伝わるか」の判断が、もともと早いからです。
よくあるつまずきと、その抜け方
最初の1ヶ月で止まりやすいポイントと、抜け方をまとめておきます。
「思ったより動きがぎこちない」
ほぼ全員が最初に感じます。原因の多くは「速さ」と「間(ま)」です。同じ移動でも、少し遅らせる・少し溜めるだけで自然になります。技術ではなく、タイミングの調整で直ることがほとんどです。
「何を作ればいいか思いつかない」
テーマを大きく考えすぎています。「自分のキャラが手を振る」だけで完成品になります。お題は小さいほど、最後まで作り切れます。
「途中で飽きる・止まる」
作品が長すぎるサインです。5〜10秒に区切り直してください。長さは、慣れてから伸ばせば十分です。
迷ったときの原則は1つだけ。「うまく作る」より「1本を最後まで作る」を優先する。これだけ守れば、最初の1ヶ月は必ず前に進みます。
まとめ
アニメーションを始めるとき、最初の1ヶ月でやることは、整理するとこうなります。
- 1週目|動きの3要素(移動・拡大縮小・不透明度)を、目で知る
- 2週目|手持ちの絵を1枚、パーツ分けして動かす
- 3週目|5〜10秒の短い完成品を1本つくる
- 4週目|見せて、直す点を1つメモする
道具は1つに絞る。長さは短く。「うまく作る」より「1本を最後まで作る」を優先する。
絵が描けることは、すでに大きな資産です。そこに「動かす」を足す最初の一歩は、思っているより短い距離にあります。まずは、手持ちの1枚を動かすところから始めてみてください。







