※この記事は以前連載した3部構成のお話をまとめて再掲したものです。
僕は漫画が大好きなんです。
大好き過ぎて漫画家になりたいと本気で考えたことがありました。
確か、25歳くらいだったかな。
漫画家を目指すには結構遅めですね。でも刃牙の板垣先生の漫画家デビューは30歳を過ぎてからだったそうです。
その当時の事を思い出しながら書いてみたいと思います。
漫画家志望の皆さんのお役に立てれば幸いです。
第一話:漫画家を目指した当時の状況
その頃は携帯コンテンツを作る会社にいました。
中途入社2、3年目くらいでしたが給料が低くてもやもやしてた時期です。
転職を考え始めてたのですが、
と思い立った次第です。
一度ふわっと思い付くと、どんどんその思いが膨れ上がっていき真面目に漫画家になるためのビジョンを描き始めたのです。
とはいえ、すぐ会社を辞めて……とはいかず(お金ないし。。)帰社後、家でしこしこと漫画を描いていました。
当時の平均睡眠時間は平日で3時間くらいだったと思います。
と自分を奮い立たせ描いてました。
勤務中あまりに眠すぎて気持ち悪くなったこともあります。睡眠大事です。
第二話:漫画が描けないっ…!
そんな感じで始まった漫画道でしたが、漫画が全然描けないんですね。
絵を描く仕事に従事していたので、そっちはある程度自信があったものの、描きたい話が思い浮かばないんです。
と思い付いたアイデアでも
と切り捨ててました。
漫画家になる人は本来、何作も何作も漫画を描いてヒットを産み出していくものです。
なのでとにかく描いた方がいいのはわかってるんですが、なんかメチャクチャ焦ってて、
遅咲きの天才!彗星のごとく漫画界に降り立った新進気鋭のルーキー!!
みたいなのを期待してたもので、デビュー作でこけるわけにはいかない!というプレッシャーからか全然筆が進みませんでした。。
漫画家を目指すならまず作品をつくることに慣れるべし!
クオリティに拘るのは大切だけど一球入魂精神だと何も描けなくなる。
自分で締め切りを区切って漫画を描くことに慣れた方がいいな、と今では思います。
そしてデビュー作完成
漫画家を目指したものの、一作品も描けずに挫折するという漫画家志望あるあるを知っていたので、そんなことにだけはなりたくない!と何とか完成させたのがコチラ
「憧れて、ヒーロー」
ヒーローが治安を守る昭和感溢れる町でヒーローに憧れる貧乏兄弟は明日を生き抜くために小銭を稼ぐ日々。そんなある日、弟がヤクザに絡まれてしまう。弟思いの兄はヒーローに扮して……。
みたいなストーリー。
恵まれない弟を常に明るく励まし笑わせてくれる兄は、弟にとって紛れもなくヒーローで~みたいなね。
その辺の設定は大好きな映画「ライフ・イズ・ビューティフル」の父親と子供の関係を拝借してます。
全てデジタル作画で、アピールのために表紙はカラーで描きました。
デジタルでの漫画の描き込み具合がよくわからなくて、実際プリントしてみた時に
と思いました。モニター上とプリントした紙で見る雰囲気は結構違うのでデジタル作画の人は要注意です。
とにもかくにも完成したので、早速漫画好きの友人に読んでもらうことに。
という大変失礼な感想を頂いたものの、正直自分でももはやこれが面白いのか何なのかわからなくなっていました。
とはいえせっかく描いたのだから、プロの感想を聞きたい!
もしかしたら……もしかするかもしれない!
そんな淡い期待を抱きつつ、出版社に持ち込みの電話を掛けました。
第三話:K談社
漫画を持ち込む上で、自分のカラーにあった出版社をチョイスするのが基本です。
僕は漠然とした憧れからまずK談社へ電話を掛けました。
当時の電話でのやり取りはこんな感じ。
年齢とデザイン系の仕事か否かを聞かれました。
結局は持ち込む作品のクオリティ次第なんでしょうけど、その辺気にするものなのかなー?と思いました。
漫画家志望諸君、びびることないぜ!
持込みってメッチャ緊張しますよね。その気持ちよくわかります。
でもね、出版社からしたら日常茶飯事なので特に珍しいことでもなんでもないんですね。
電話でアポとってみるとスムーズにやりとりは進行するはずです。
いざ持ち込み
初めて入る出版社に緊張しつつも受付で持ち込みに来た旨、アポはとってある旨を伝えました。
年がら年中持ち込まれてるのでしょうから、受付嬢の方も慣れたものです。
通された席で待ってると女性の編集者の方が来ました。……コーヒー片手に。
持ち込みのシミュレーションの為、前日にバクマンの”初めてマンガを出版社に持ち込むシーン”を読み込んでました。
バクマンによると、
編集者が飲み物を出すときは「見込みあり」と判断したとき
だという話だったので、出会い頭でコーヒーを持ってこられて混乱しました。
早速、持ってきた漫画を読んでもらいます。これまたバクマンで得た
編集者は読む速度が半端ない
という予備知識があったのですが、普通でした。人によるみたいです。
▲漫画家目指すなら是非読んでみて下さいね!!
一度読終わり、また中盤に戻ってパラパラ読み返しています。
この間の緊張たるや。。。
これは頑張って漫画描いて持ち込んでみないと体感できない気分ですね。
第四話:女性編集者の評価
まさかのべた褒めでした。
- キャラクターがたってる(お兄さんキャラ良いですね)
- 世界観が素敵(昭和感漂う街 × ヒーローが実在する世界)
- 絵も味があって良い
- ページ捲りを計算したコマ割り(次ページへの期待をもたせる)
とのこと。(当時のメモから。編集者さんの感想はしっかりメモすべし!)
第五話:駆け引き
うまくいきすぎているッッ!!
なんとなく漠然とした不信感を覚えました。
べた褒めされて嬉しいのは嬉しいのですが、正直そこまで評価されるような作品ではないということは自分自身が一番分かっていたからです。
しかし、もしかしたら自分でも気づいていない才能をこの編集者さんは見抜いてくれているのかもしれない。
さあどうでる?
どうしても御社が欲しい才能で有ればっ!
あなた(女性編集者)に出世をもたらしうる金の卵なのであればっ!
この申し出を無理やりにでも説得して他社への流出を防ぐはず…ッ!!
こうしてK談社を後にしたわけです。冬の身を切るような寒さがほてった僕には気持ちが良かったのを覚えています。
実際に漫画を持ち込んでみて感じたこと
- 緊張することない
- メモとっといて良かった
- 悪かった点も聞いた方が良い(普通は言ってくれると思うけど)
- 次回作の構想がある場合は、簡潔にまとめた資料(キャラクターイメージ、世界観、ストーリー、見どころなど)を用意して見てもらったほうがいい
- 変な駆け引きは自分を傷つけるだけだぜ!
あと、漫画の描き方の決まりみたいのあるじゃないですか。
タテ〇mm ヨコ〇mmで、この範囲の中に絵が収まるように描いて~とか、吹き出し内は鉛筆で~とか、トレーシングペーパーをうんぬん~とか。
ああいうのは、そんなに気にすることないです。やっぱり重要なのは中身なので、形式がよくわからなくてもとりあえず描いて表現することが大切。
形式がよくわからなくて描けないって人はもったいないですよ!ちなみに僕が描いた漫画はその辺結構適当でしたww
第六話:E社編
よそに持ち込む予定があるというのは嘘ではなくて、実はもう一社アポどりしていました。(しかも同じ日に)
K談社を出た僕はその足でE社へと向かいます。
ここはK談社ほど大手ではないけど、尖った作品を多く世に送り出していて僕の好きな作品も多数取り扱っているため、肌に合うかな?という理由で持込みアポ取りしました。
E社到着。こちらもスムーズに事は進みます。オフィスの片隅のテーブルに通してもらいしばらく待っていると
と名刺を受取ってビックリ。なんとE社の代表取締役のH氏がわざわざ見て下さるとのこと!!
じゃあ早速、と言って読み始めるH氏。
K談社を経て持込み慣れ(1回しか行ってないくせに)していた僕は完全に油断していました。
次々とページを捲るH氏を見ながら
なんて思っていました。
サーッと読み終わったH氏。ひと呼吸ついたあと
第七話:代表取締役の批評
持ち込んだ漫画を凄い速度で読むE社代表H氏。その光景を見ながらぼんやりとこんなことを考えてました。
そう考えると一層ドキドキしてきます。そして……
状況が呑み込めず、固まる僕をよそにH氏は次々と指摘していきます。
あわててとったメモによると
E社H氏の評価
- ダメ、とにかくダメ
- まず設定がイマイチ。このヒーローが実在してるのか架空なのか説明が足りてない
- いちいち泣かせようとしすぎ。うざったい。
- 絵はまあ良いけど、もっと攻めてもらいたい。
- 今の状態じゃ絵も話も中途半端で全然引っかかってこない
とのこと。
ボロクソに言われたものの、逆にすっきりした気がしました。
細かいところまで指摘してもらえてありがたかったです。へこむというより逆に燃えて
となりました。
しかし代表の貴重な時間を割いて頂いてもらって申し訳ない思いと感謝でいっぱいです。
第八話:漫画を出版社に持ち込んでみて
と、いった感じで描き上げた作品を出版社に持ち込んでみて勉強したことをまとめてみます。
緊張することは無い
この連作中何度か言っております。出版社サイドからしたら漫画の持込みなんてよくあることです。
電話でのアポ取りも受付でのやり取りも全て流れが出来ているので、身を任せていればスルッと編集者さんまで通してもらえます。
漫画の形式気にしない!
サイズとか決まり事なんかいちいち拘らなくてもいいので、とにかく漫画を描ききることに集中しましょう。
結局は中身が重要ですよ!実際、僕が持ち込んだ作品は形式無視でしたが、そこへのツッコミは特にありませんでした。
まずは中身描けるようになれってことですね。はい。
編集者によって感想が全然違う
今回持ち込んだK談社とE社ではフィードバックが180度違いました。一定水準以上の作品を作れれば評定も安定してくるとは思いますが。
なので最初の頃は、複数社持ち込んでみることをお勧めします。
思いもよらない感想がもらえたり、自分と合った編集者さんと出会えたりするかもしれませんよ。
漫画を描いたら一度は必ず持ち込んでみるべき
実際にプロの編集者に見てもらい得られるものは計り知れません。
そして、読んでもらってる時のドキドキは必死に漫画を描いて持ち込んだ者にしか体験できないと思います。
作品作りに魂を込めれば込めるほど、この時の高揚感を体感できるはずです。
なんて言ってたらいつまでたっても持ち込めません!
プロのフィードバックも貰えないので、いつまでも自分の中にあるものでしか漫画が描けませんよ!
くじけず次に繋げよう!
漫画の持込みは基本的に欠点を指摘されるために行くものだと思ってください。
言われたことは全て自分の財産になるのでしっかりメモをとって吟味し、必要なものは反映させられるよう努力しましょう。
プロの的確な指摘を受けると次回作へのモチベーションが高まります!
最終話:漫画持込み体験談まとめ
僕の若かりし日の体験談を長々と書いてみました。
とてもいい経験でしたし、持込み未経験漫画家志望の方に少しでもそれが伝わればという思いでしたためた次第です。
もしかしたら、あなたが描いたその作品、実はメッチャクチャ面白いかもしれませんよ!
そのまま封印してしまわないで、プロ編集の目に晒すことで日の目をみるかもしれません。
この記事を読んで、一念発起したあなたが、いずれデビューして面白い作品を我々漫画ファンに届けてくれることを楽しみにしてます。
こんな僕がこれより前にイラストレーターを目指して奮闘する漫画を連載中です!よかったらそちらもご覧くださいね^^