履歴書の志望動機欄で、手が止まっていませんか。
- 「御社のイラストが好きです」から先が、どうしても続かない
- 未経験だから、書けることが思い当たらない
- 例文を写すと、自分の言葉じゃない感じがして不安になる
どれか一つでも当てはまったら、それは文章力の問題ではありません。志望動機で何を見られているかが、まだ言葉になっていないだけです。
採用する側は、志望動機で「なぜ他社ではなくうちなのか」「入って何をしてくれるのか」を見ています。そしてもう一つ、志望動機とポートフォリオが同じ話になっているかを必ず確かめます。ここがずれていると、どんなに丁寧な文章でも通りません。
この記事では、未経験・新卒・転職それぞれの例文を3つずつ(合計9例)と、採用側に刺さる書き方・落ちるNG例・ポートフォリオとの合わせ方まで通しで解説します。例文はそのまま写すためのものではなく、自分の経歴に1行だけ差し替えれば通る「型」として使ってください。
イラストレーターの志望動機で評価される3つの型
まず土台です。採用担当が読みやすく、評価しやすい志望動機は、次の3つがこの順で入っています。
- なぜこの会社なのか(応募理由)…作品・事業・テイストの、どこに惹かれたかを具体的に
- 自分は何ができるか(スキル・経験)…描ける絵柄、続けてきたこと、前職で培った力
- 入って何をするか(貢献)…その会社でどう役立ちたいか
多くの人が①で止まります。「好きです」「憧れです」で終わると、読んだ側は「で、何ができる人なんだろう」と宙ぶらりんになります。逆に②③だけだと、「それ、うちじゃなくてもよくない?」になります。3つが揃って初めて、その会社に出す意味のある志望動機になります。
長さの目安は、履歴書の欄なら200〜300字、面接で話すなら1分ほどが一般的です(媒体や会社の指定で変わるので、あくまで目安です)。短い枠ほど、①②③のどれも削らずに圧縮するのがコツです。
未経験・新卒・転職で「刺さる軸」はこう違う

同じ志望動機でも、立場によって採用側が一番見たいところが違います。ここを外すと、内容は正しくても響きません。
未経験(他業種から)
見られるのは伸びしろと「量」です。経歴に実務がないぶん、毎日描き続けた継続や、志望先に寄せて描いた作品の数が説得材料になります。「これだけ手を動かしてきた」が一番効きます。
新卒
見られるのは基礎画力と、チームで素直に伸びる姿勢です。学校やサークルでの制作経験、修正を受け止めて直せること。即戦力より「伸びる人か」を見られます。
転職(経験者)
見られるのは即戦力かどうか。作画のスピード、修正対応、納期を守る進行管理など、現場に入ってすぐ回せる力を具体的に示します。「前職で何本、どんな案件を回したか」が武器になります。
下の表に、立場ごとの「一次評価軸」と、志望動機で前に出すべき要素をまとめました。自分がどの枠で応募するのかを決めてから書き始めると、ぶれません。
【未経験】会社員イラストレーターの志望動機 例文3つ
他業種からの転職・独学スタートの3例です。いずれも「量・継続」と「前職の力の翻訳」をセットにしています。
例1|広告制作会社・前職は法人営業
前職の法人営業では、お客様の要望を言葉の奥まで汲み取り、形にする力を磨いてきました。独学で描き続けてきたイラストを、相手に確実に伝わる表現として届けたいという思いが強まり、広告領域で挑戦できる貴社を志望しました。要望を正確に絵へ翻訳する姿勢で貢献したいと考えています。
例2|ソーシャルゲーム会社・前職は事務
貴社の『(タイトル名)』のキャラクターに惹かれ、絵がユーザーの心を動かす力を実感しました。未経験ではありますが、一年間毎日作画を続け、貴社のテイストに寄せた作品をポートフォリオにまとめています。学ぶ速さと手を動かす量で、できるだけ早く戦力になれるよう努めます。
例3|制作会社・前職は接客
接客で培った「相手が本当に求めているものを読み取る」習慣は、ディレクターやクライアントとのやり取りにも活かせると考えています。未経験からの挑戦ですが、独学で制作した作品を貴社の案件を想定して描き直し、実務に近い形で準備してきました。現場で素直に吸収しながら伸びていきたいです。
どの例も、「好き」で終わらず、前職の経験を志望先の仕事に結びつけているのがポイントです。未経験の弱点(実務がない)を、継続と準備でカバーしています。
【新卒】イラストレーターの志望動機 例文3つ
学校・サークルでの制作経験を軸にした3例です。「基礎力」と「チームで伸びる素直さ」を前に出します。
例1|ゲーム会社・専門学校卒
専門学校でキャラクターデザインを専攻し、卒業制作では世界観設定から立ち絵までを一人で担当しました。貴社の『(タイトル名)』が持つ、プレイヤーの感情に寄り添うキャラクター表現に強く惹かれています。学んだ作画力とチーム制作の経験を、入社後すぐに現場で役立てたいと考えています。
例2|広告系制作会社・美大卒
大学ではビジュアルコミュニケーションを学び、課題では「伝えたい一点を絵で成立させる」ことを徹底してきました。貴社が手がける広告のイラストは情報と感情の両立が見事で、自分の学びを実務で伸ばせる環境だと感じています。発信者の意図を絵に翻訳する役割を担いたいです。
例3|制作会社・制作サークル経験
在学中はサークルでゲームのイラストを任され、締め切りと修正対応の両方を経験しました。描くだけでなく、フィードバックを素直に受けて改善していく過程が好きだと気づき、チームで作品を磨く貴社に魅力を感じています。成長意欲と修正の速さで貢献していきたいです。
新卒は実績が少なくて当然です。だからこそ「何を学び、どう直してきたか」という過程を書くと、伸びる人だと伝わります。
【転職】イラストレーターの志望動機 例文3つ
経験者・異職種からの転職の3例です。「即戦力」と「なぜ今この会社へ移るのか」をはっきりさせます。
例1|同業(ソシャゲ→世界観重視の会社へ)
現職ではソーシャルゲームのキャラクターイラストを二年間担当し、量産と品質維持の両立を学びました。一方で、より世界観の作り込みに深く関わりたい思いが強まり、重厚な世界観を持つ貴社の作品に惹かれています。培った作画スピードと修正対応力で、即戦力として貢献します。
例2|異職種(グラフィックデザイナーから)
広告のグラフィックデザイナーとして、構図やあしらいで情報を整理する力を磨いてきました。制作を重ねるうちにイラスト表現への関心が高まり、絵そのもので訴求を担いたいと考えるようになりました。デザインの素養を活かし、レイアウトまで見通せるイラストレーターを目指します。
例3|制作会社から制作会社(表現の幅を広げたい)
現職では販促物のイラストを中心に担当してきましたが、キャラクターから背景まで一気通貫で手がける貴社の制作体制に魅力を感じています。これまで培った納期管理とクライアント折衝の経験を土台に、表現の幅を広げながら長く貢献していきたいと考えています。
転職で気をつけたいのは、現職の不満を理由にしないこと。「今より○○がしたい」という前向きな理由に言い換えると、同じ事情でも印象がまるで変わります。
応募先がまだ決まっていないなら、先に求人を見る
ここまでの例文は、どれも「この会社に入りたい」が決まっている前提で書いています。志望動機は応募先ごとに書くものなので、応募先が決まらないうちは、いくら机に向かっても文章になりません。手が止まっている原因が実はここ、という人は少なくありません。
その場合は、書く前に求人を見て回るのが近道です。募集要項の「仕事内容」「求める人物像」を読むと、その会社が志望動機で何を聞きたいのかが先に分かります。求人探しに転職エージェントを使うと、担当者に応募先の様子を聞けて、応募書類も見てもらえます。イラストレーターの求人を探しやすいのは、次の2つです。
- ギークリー
…IT・Web・ゲーム業界に特化した転職エージェント。職種の一覧に「イラストレーター・CG・グラフィックデザイナー」があり、応募書類の添削サポートも受けられます。ゲーム会社・Web系の会社を考えている人向けです。 - マスメディアン
…宣伝会議のグループ会社が運営する、マーケティング・クリエイティブ職種に特化した転職エージェント。グラフィックデザイナーなどデザイナー職の求人を扱っています。広告・制作会社や、事業会社の社内デザイナーを考えている人向けです。
どちらも登録は無料です。すぐに転職する気がなくても、気になる求人を2〜3件選んで、その会社あての志望動機を書いてみると、上の例文のどこを自分の言葉に差し替えればいいかが一気に見えてきます。
ポートフォリオと志望動機を「ひとつの話」にする合わせ方

ここが、上位の記事があまり触れていない一番大事なところです。志望動機で宣言した強みは、ポートフォリオのどの作品で証明されていますか。
採用側は、志望動機を読んだあとに必ずポートフォリオを見ます。そのとき言っていることと作品が食い違っていると、一発で見抜かれます。たとえば——
- 志望動機で「世界観の作り込みが得意」と書いたのに、ポートフォリオが単発のキャラ立ち絵ばかり
- 「幅広いテイストに対応できる」と書いたのに、全部同じ絵柄
- 「貴社のソシャゲのテイストに寄せられる」と書いたのに、関係ない作風しか載っていない
これだと、志望動機が「言葉だけ」に見えてしまいます。
合わせ方:宣言とサンプルを1対1で対応させる
やることは単純です。志望動機で前に出す強みを決めたら、その強みを証明する作品をポートフォリオの先頭に置く。この1対1の対応を作るだけで、志望動機の説得力が一気に上がります。
- 志望動機で言う強みを1〜2個に絞る(例:テイストを寄せる力)
- その強みを一番見せられる作品を選ぶ(例:志望先に寄せて描いた作品)
- ポートフォリオの最初のページに、その作品と一言「貴社の○○を想定して制作」を添える
志望動機とポートフォリオが同じ話をしていれば、面接官は「書いてあることが本当だ」と確認できます。これが、未経験でも通る人と通らない人の分かれ目です。
前職・独学の経験を強みに変える「掛け合わせ方」
「絵以外の経歴は書けることがない」と思いがちですが、逆です。前職の経験は、イラストの仕事の価値に翻訳できます。採用側は、絵だけでなく「現場で一緒に働けるか」を見ているからです。
- 営業…相手の要望を引き出し、言葉にする力。=ヒアリングして絵に落とす力に翻訳できる
- 接客・販売…相手の本音を読む力。=ディレクターの「なんか違う」を汲み取る力に
- 事務・管理…締め切りと段取りの管理。=納期を守る進行力に
- デザイナー…構図・情報整理・レイアウト。=伝わる絵の設計力に
- 販売・SNS運用…反応を見て改善する習慣。=修正を前向きに回せる姿勢に
書き方のコツは、「前職の力+だから御社でこう活かせる」の形にすること。「営業をしていました」で止めず、「要望を汲み取る力があるので、クライアントの意図を絵に翻訳できます」まで書き切ると、志望動機として成立します。
独学の人も同じです。「独学です」で終わらせず、「毎日1枚を1年続けた」「志望先のテイストで10点描いた」のように、続けた量と具体を数字で添えると、伸びしろの根拠になります。
志望動機で落ちるNG例と、その直し方
最後に、よく見る「落ちる志望動機」を3つ、直し方とセットで挙げます。自分の下書きと見比べてみてください。
NG1|「御社の絵が好きです」で終わる
きっかけとしては良いのですが、好き「だけ」だと、ファンの感想と変わりません。
直し方:好きな理由を具体にして、自分がどう関わりたいかまで続ける。「○○というテイストに惹かれ、自分もこの方向の表現を強みにしてきました。貴社でその強みを伸ばしたいです」。
NG2|待遇・環境が主語になっている
「在宅ができるから」「安定しているから」が中心だと、条件が合えばどこでもいい人に見えます。
直し方:主語を「自分が何を提供できるか」に戻す。働き方の希望は、志望動機ではなく条件欄や面接の質問で伝えればOKです。
NG3|「勉強させてください」で止まる
謙虚に見えて、実は「教えてもらう前提の人」と受け取られます。会社は学校ではありません。
直し方:「学びたい」の前に「今できること」を置く。「○○はすでにできるので、まず現場で貢献しながら、△△を伸ばしていきたい」。できることと伸ばしたいことを両方書くと、伸びる即戦力に見えます。
志望動機を書いたら、面接で深掘りされる前提で読み返してください。面接でどんな質問が来るかは、下の記事にまとめています。志望動機と面接の受け答えを揃えておくと、通過率が変わります。
会社の種類で「軸」を読み替える
同じイラストレーター職でも、会社の種類によって求められるものが違います。志望動機で前に出す軸を、応募先に合わせて変えましょう。
- ゲーム会社…量産と世界観。たくさん描けること、世界観に合わせられることを示す
- 制作会社・広告系…汎用性と折衝。幅広いテイストに対応できること、クライアントとやり取りできることを示す
- 広告(1点で伝える仕事)…「伝えたい一点を絵で成立させる力」を前に出す
応募先がどのタイプかを調べ、その会社が一番ほしい力を志望動機の②(できること)に置く。同じ経歴でも、見せ方の順番を変えるだけで刺さり方が変わります。それぞれの仕事内容は、下の記事も参考にしてください。
よくある質問(イラストレーターの志望動機)
Q1. 志望動機は何文字くらい書けばいいですか?
履歴書の欄なら200〜300字、面接で話すなら1分で話せる長さが一般的な目安です。媒体や会社の指定があればそれに従ってください。短い枠でも、応募理由・できること・貢献の3つは削らないのがコツです。
Q2. 「絵が好き」から書き始めてもいいですか?
きっかけとして書くのは問題ありません。ただし好き「だけ」で終わらせず、具体的な理由と、自分がどう貢献できるかまで続けてください。
Q3. 未経験でも志望動機だけで通りますか?
志望動機だけでは通りません。採用側は志望動機とポートフォリオを合わせて見ます。両方が同じ話になっていることが前提です。合わせ方はこの記事の「ひとつの話にする」の章を参考にしてください。
Q4. 志望動機と自己PRはどう書き分けますか?
志望動機は「なぜこの会社か」、自己PRは「自分は何ができるか」です。重なる部分もありますが、志望動機は会社への理由、自己PRは自分の強み、と主語を分けると書き分けられます。
Q5. ポートフォリオに載せる作品は、志望動機と合わせるべきですか?
合わせるべきです。志望動機で前に出した強みを証明する作品を、ポートフォリオの先頭に置いてください。言葉と作品が一致していると、説得力が大きく上がります。
まとめ|例文は「型」として使い、1行を自分の言葉にする
イラストレーターの志望動機は、①なぜこの会社か ②何ができるか ③入って何をするかの3つを、立場に合った軸で書くのが基本です。
未経験なら量と継続、新卒なら基礎力と素直さ、転職なら即戦力。そして志望動機とポートフォリオを同じ話にそろえること。これができていれば、文章がうまくなくても通ります。
この記事の例文は、そのまま写すためのものではありません。型として使い、志望先の作品名やテイスト、自分の経歴に関わる1行だけを自分の言葉に差し替えてください。その1行が、あなただけの志望動機になります。
この記事のテーマを深めるなら、手元に置いておきたいもの












