イラストの仕事で、こんな場面に覚えはありませんか。
- 見積もりを聞かれて、いくらと答えればいいのか固まってしまった
- 相手の予算に合わせて値段を下げたら、あとで割に合わなかった
- 同業の料金表を見ても、自分の1枚がそこに当てはまるのか分からない
値段が決められないのは、度胸や経験の問題ではありません。同じ1枚の絵でも、用途によって相場が何倍も変わるのに、その分け方を誰もはっきり教えてくれないからです。
この記事でわかることは、次の5つです。
- 用途別・種類別の相場の幅(まずは全体像)
- 値段を「土台+上乗せ」で組み立てる考え方
- 受け取る前に報酬が引かれる場所(手取りで考える)
- 二次利用・商用範囲で、同じ1枚から報酬を足す方法
- 自分の最低単価の決め方と、単価の天井の上げ方
読み終わる頃には、次に見積もりを聞かれたときに、根拠を持って金額を出せるようになっているはずです。発注する側(当サイトを運営する制作会社)から見た、値段が動く仕組みも一緒にお伝えします。
なぜ「イラストの相場」は一言で言えないのか
結論から言うと、同じ絵でも「どこで、どう使われるか」で金額の桁が変わるからです。
分かりやすい例があります。日本イラストレーター協会の解説によると、同じ動物のキャラクターでも、雑誌のカットとして使われるなら5,000円程度、大手企業のマスコットとして使われるなら数十万円、さらにキャラクターグッズに展開されると百万円単位になることもある、とされています。
絵そのものは同じでも、これだけ幅が出ます。だから「イラスト 相場」と検索しても、出てくるのは「3,000円〜数十万円」という何十倍もの幅ばかりで、自分の1枚がどこに入るのかが分からない。これが、値段を決められない一番の原因です。
裏を返せば、用途を正しく分けられれば、自分の絵がどのゾーンに入るかは見当がつくということです。まずはその一覧から見ていきます。
用途別の相場の幅|まずは全体像をつかむ
イラストレーター本人に直接依頼する場合の、用途別のおおよその相場です。いずれも一般的な目安で、絵柄やクオリティによって上下します。下の金額は、複数の相場情報で共通して言われている幅をまとめたものです。
| 用途 | 相場の目安(1点) | 中身 |
|---|---|---|
| アイコン・小さなカット | 3,000円〜1.5万円 | SNSアイコン、記事内の小さな挿絵。商用利用で上振れ |
| 書籍・雑誌のカット | 1点3,000円〜1万円前後 | 10cm角に収まる程度の小カット。モノクロよりカラーが高い |
| コンテンツ用イラスト(中) | 1.5万〜5万円 | 記事のメイン画像、資料の図解など |
| キャラクターデザイン | 2万〜10万円 | オリジナルキャラを設定込みで作る。三面図・差分で上限寄り |
| キービジュアル・主役級 | 5万〜数十万円 | 広告・商品の顔になる1枚。分野により大きく上がる |
用途によって価格が何倍も変わるという考え方は、日本イラストレーター協会「イラストの料金と著作権に関して」を参照しています(金額は一般的な目安で、絵柄や依頼先により上下します)。
なお、この表の金額は下限〜中位の目安です。広告やエンタメのキービジュアルなど、露出の大きい主役級の1枚は、これを大きく上回り、数十万円以上になることも一般的とされています。
ここで大事なのは、この表は「出発点」であって「答え」ではないということです。同じ「コンテンツ用イラスト」でも、1万5,000円で受ける人と5万円で受ける人がいます。その差がどこから来るのかは、このあと分解します。
仕事の種類ごとの目安|自分の近いジャンルから当てる
「用途別」だけだと、自分の受けている仕事がどこに入るか迷うことがあります。そこで、仕事の種類ごとの制作費のおおよその目安も並べておきます。これも一般的な水準で、案件の規模・媒体・描き込み量で上下します。
| 仕事の種類 | 制作費の目安 | ひとこと |
|---|---|---|
| 表紙・扉イラスト | 3万〜20万円 | ネームバリューで上振れ。文字組みまで請けるとさらに追加 |
| 広告用イラスト | 数万〜数十万円 | 買い切り・競合制限が付きやすく、そのぶん単価は高め |
| Webヘッダー・メインビジュアル | 3万〜15万円 | 法人か個人か、サイトの規模で予算が変わる |
| ゲーム系(カードイラスト等) | 5万〜15万円 | 描き込みの多い美麗系は上限寄り。大量発注で単価が下がることも |
| LINEスタンプ | 1枚 3,000円〜1万円 | セット発注が中心。動くスタンプは単価を上げやすい |
| マンガ(広告・説明用) | 1ページ 数千円〜2万円 | コマ割りから請けるか、作業範囲で変わる |
| 絵コンテ | 15秒で 2万〜8万円 | 映像の知識が要る。描き込み量で変動 |
| アニメーション用イラスト | 5万〜30万円 | Web用30秒CMの作画の目安。動かす工程まで請けるとさらに上 |
| ストックイラスト(素材販売) | 1点 数十円〜数千円/回 | 売れるたびに入る資産型。即効性はないが積み上がる |
この表で見えてくるのは、同じ「イラスト1枚」でも、仕事の種類によって桁が違うということです。特に、動き・アニメーションが絡む仕事ほど単価の上限が高くなる傾向は、あとの章でもう一度触れます。
値段は「土台+上乗せ」で考える
相場を見ても値段が決まらないのは、相場が「幅」でしか答えてくれないからです。その幅の中で自分の金額を出すには、「土台」と「上乗せ」の2つに分けて考えると迷わなくなります。
基本の式はこうです。
値段 = 土台(作業時間 × 自分の時給)+ 上乗せ(使われ方の対価・難易度・スピード)

- 土台:作業時間 × 自分の時給
その1枚に何時間かかるかを見積もり、自分の時給を掛けます。これが値段の土台(最低ライン)です。時給の決め方は後の項目で説明します。 - 上乗せ①:使われ方の対価
そのイラストがどれだけ広く・長く使われるか。ここが用途別の相場の差を生んでいる部分です。個人が1回使うのと、全国の広告で1年間使われるのとでは、同じ作業でも価値が違います。 - 上乗せ②:難易度・スピード
描き込みの細かさ、リアル寄りの表現、そして短納期。難しいほど、急ぐほど上乗せします。
相場表の金額は、この土台と上乗せを合わせた「結果」です。だから相場を丸ごと真似るのではなく、自分の作業時間と時給を土台に置いて、そこに使われ方の対価を上乗せすると考えると、相場の幅の中で自分の位置を説明できるようになります。
同じ絵でも値段が変わる4つの要素
「上乗せ」の中身を、もう少し具体的にします。まったく同じ絵でも、次の4つで金額は動きます。見積もりのときに相手へ確認したい項目でもあります。
- 使われる範囲の広さ
自社サイトに1回載せるだけか、全国のバナーやパッケージに展開されるか。露出が広いほど、絵が生む価値も上がります。 - 商用利用かどうか、その範囲
個人利用か商用か。商用なら、媒体・地域・期間はどこまでか。ここは後の項目で詳しく触れます。 - 納期
短納期は割増が基本です。他の仕事を止めて優先する必要があるからです。「明日まで」と「1か月後」では、同じ絵でも値段を変えていい。 - 修正回数・ラフの本数
ラフを3案出すのか1案か、修正は何回までか。ここを最初に決めておかないと、青天井で時間だけ取られます。
ポイントは、これらを「見積もりの前」に確認することです。用途も範囲も聞かないまま金額だけ答えると、あとから「実は全国展開で」と言われても値段を上げられません。先に条件を聞くことが、そのまま値段を守ることになります。
受け取る前に報酬が引かれる場所を知っておく
もうひとつ、相場とセットで知っておきたいのが「もらう額」と「手取り」は違うということです。仕事によっては、依頼者が払った金額が、あなたの口座に届くまでに何か所かで減ります。減る場所は大きく3つあり、性質がまったく違います。

- 仲介サイトの手数料
ココナラやクラウドワークスなどを通したときに、取引額から差し引かれる料金。料率は公開されていて、事前に計算できるのが特徴です。 - 代理店・制作会社の取り分
広告主とあなたの間に会社が入るときの取り分。料率が公開されないのが普通で、「中抜き」と感じやすいのはここです。ただし、営業・仕様固め・修正の窓口・支払いの約束など、間の会社が手間を引き受けているぶんの代金でもあります。自分の手間が減っているなら、それは仕事の代金です。 - 源泉徴収・振込手数料
会社から報酬を受け取るときに差し引かれる所得税など。源泉徴収は誰かの取り分ではなく、税金の前払いなので、ほかの2つとは別物です。
①のうち、よく使われる仲介サイトの手数料は次のとおりです(各サービスの公式ヘルプで確認。料率は改定されることがあります)。
| サービス | クリエイター側の手数料 | 1万円の取引の手取り |
|---|---|---|
| ココナラ | 22% | 7,800円 |
| クラウドワークス | 10万円以下の部分で実質22%(段階制) | 7,800円 |
| SKIMA | 2万円以下22%(段階制) | 7,800円 |
| ランサーズ | 16.5% | 8,350円 |
| pixivリクエスト | 10% | 9,000円 |
少額の仕事ほど、引かれる割合が大きくなります。「1万円なら受けてもいい」と思った仕事は、実際には7,800円の仕事かもしれません。見積もりは、手数料を差し引いた手取りで考える癖をつけましょう。手数料は「場所代」だけでなく、集客・決済・依頼者が先に代金を預ける仮払いによる未払いの防止までをまとめて買っている代金でもあります。
③の源泉徴収は、支払金額が100万円以下なら10.21%です(国税庁。3万円の報酬なら3,063円が差し引かれる)。これは確定申告で1年分を計算し直すと、納めすぎた分が戻ってくることがあります。手数料と源泉徴収を一緒に数えないこと。ここを混ぜると、会社経由の仕事が実際より割に合わなく見えてしまいます。
手数料率は各サービスの公式ヘルプ(ココナラほか)、源泉徴収の税率は国税庁の公表値によります(2026年時点。改定されることがあります)。
二次利用・商用範囲は「同じ1枚で報酬が増える」ところ
もっとも取りこぼしやすいのが、ここです。制作費(描く対価)と、利用料(使う対価)は別のものだと切り分けておくと、収入の作り方が変わります。
たとえば、最初は1つの媒体向けに描いた絵が、後から別の用途にも使いたいと言われることがあります。このとき「制作費は最初にいただいたので追加はなし」とするか、「別の用途には二次使用料をいただく」とするかで、同じ1枚から得られる報酬が変わります。
考え方の目安として、次を意識しておくと交渉しやすくなります。
- 買い切り(著作権譲渡・使い放題)にするなら、その分をまとめて上乗せする
相手は自由に使えるようになるので、1回分の制作費と同じではありません。 - 用途ごとに許可する形にするなら、媒体・期間・地域を明記する
「Webのみ・1年間」で受けた絵を、印刷物や翌年も使うなら、あらためて相談する前提にします。
大事なのは、最初の見積もりの段階で「どこまでの利用が含まれるか」を書いておくことです。ここを空欄にしたまま納品すると、後から範囲が広がっても追加を言い出しにくくなります。逆に明記しておけば、用途が増えるたびに、堂々と報酬を上乗せできます。
自分の「最低単価」を先に決めておく
ここまでの話の土台になるのが、自分の最低時給です。これを先に決めておくと、安い依頼が来たときに「受けるか・断るか・交渉するか」を迷わず判断できます。
決め方はシンプルな逆算です。
- 1か月に必要な額を出す(生活費+事業経費+税金・保険の分)
- 1か月に実際に描ける時間で割る(打ち合わせや事務作業を引いた、手を動かせる時間)
- 出てきた金額が、あなたの最低時給です
あとは、その1枚にかかる時間 × 最低時給が、その絵の下限になります。相場表の金額がこの下限を下回るなら、その用途はそもそも割に合っていないということ。受けるとしても、作業量を減らす(ラフ回数を絞る、簡略な絵柄にする)か、条件を交渉する前提で臨みます。
ここで効いてくるのが料金表を自分で持っておくことです。料金表があると、価格の基準線を自分側に置ける——提示がないと、値段は相場か相手の予算で決まってしまいます。ただし、金額だけ並べると相見積もりで安い人と比べられやすいので、「〇円〜」の表記にして、含まれる工程や修正回数を併記すると、安さだけの比較から抜けられます。
「相場だから」で値段を決めると、忙しいのに手元に残らない状態になりがちです。相場は世の中の目安、最低時給は自分の防衛線。この2つを両方持っておくと、値段で消耗しなくなります。
同じ仕事で値上げしにくい理由と、単価の高い仕事
値段を整理していくと、ひとつの壁にぶつかります。同じ種類の仕事は、途中から値上げしにくいという壁です。
たとえば書籍のカットイラストは、1ページあたりの予算が先に決まっていて、その中からカット代が割り振られることがほとんどです。相手の予算に天井があるので、腕が上がっても単価はなかなか動きません。だから、同じ仕事の中で単価を上げようとするより、先に2つの打ち手を知っておくほうが近道です。
打ち手①:スピードを上げる。単価を上げようとクオリティの研鑽に力を入れる人は多いですが、実は「速くする」ほうが時間あたりの実入りは伸びやすいです。同じ1枚を半分の時間で描ければ、時給は倍になります。クオリティは上げ止まりがありますが、速さは工程の見直しで伸ばせます。
打ち手②:単価の単位そのものを上げる。種類別の表で見たとおり、動き・アニメーションが絡む仕事は単価の上限が高い傾向があります。動くLINEスタンプ、アニメーション付きのゲームキャラ、サービス紹介のアニメCM——こうした仕事は「1枚いくら」ではなく「1本いくら」で動くため、単価の桁が変わってきます。イラストに「動き」を1つ足せると、受けられる案件と単価の天井が変わる、ということです。
発注する側として言えるのは、いま広告の制作現場では「絵も描けて、動かせる人」が足りていないということ。イラストを外注し、別の人に動かしてもらう分業には手間もコストもかかるので、1人で両方できる人に仕事が集まります。絵が描ける人は、その位置にいちばん近いところにいます。
「アニメーションは自分には無理」と思うかもしれませんが、広告で使う動きの多くは、描いた絵のパーツを分けて動かす手法が主流で、何百枚も描くわけではありません。イラストレーター向けに、この最短ルートを設計した講座として、粕田屋は AdAnimeSTUDIO を運営しています。単価の天井を一段上げたくなったときの選択肢として、頭の片隅に置いておいてください。
よくある質問
Q. イラスト1枚の相場は、結局いくらが普通ですか?
用途によります。SNSアイコンや小さなカットなら数千円〜1.5万円、記事のメイン画像など中くらいのもので1.5万〜5万円、キャラクターデザインで2万〜10万円、広告の主役級になると数十万円以上、というのが一般的な目安です。「普通」の金額はなく、どこで・どう使われるかで決まります。
Q. 相場より安く言われたら、受けないほうがいいですか?
金額だけで判断せず、自分の最低時給を下回っていないかで判断しましょう。かかる時間 × 最低時給が、その絵の下限です。下回るなら、作業量を減らすか、条件を交渉する前提で臨みます。実績づくりの時期に戦略的に受けるのはありですが、「相場だから」でずるずる下げるのは避けたいところです。
Q. もらった額より振り込みが少ないのはなぜですか?
多くは仲介サイトの手数料か、源泉徴収です。手数料はおおむね10〜22%で、取引額から引かれます。源泉徴収は所得税の前払い(100万円以下は10.21%)で、確定申告で戻ってくることがあります。この2つは性質が違うので、分けて考えてください。
Q. 二次利用の料金は、どう決めればいいですか?
決まった相場はありませんが、最初の見積もりに「どこまでの利用が含まれるか」を書いておくのが基本です。買い切り(使い放題)にするならまとめて上乗せ、用途ごとに許可するなら媒体・期間・地域を明記します。範囲が広がるたびに、二次使用料として堂々と上乗せできます。
Q. 値上げしたいけれど、言い出しにくいです。
同じ仕事の中で値上げするより、スピードを上げて時間あたりの実入りを増やすか、単価の単位が高い仕事(動き・アニメーションが絡むもの)に広げるほうが、角が立たずに手取りが増えます。実績が積み上がったタイミングで、料金表を更新して新規から新価格にする方法もあります。
まとめ
イラストの値段を決められないのは、腕やセンスの問題ではなく、相場が用途で何倍も変わる仕組みを整理できていないだけです。
- 相場は用途・種類で桁が変わる — まずは一覧を出発点にする
- 値段は「土台+上乗せ」で考える — 土台=作業時間×時給、上乗せ=使われ方の対価・難易度・スピード
- 手取りで考える — 手数料・取り分・源泉徴収は性質が違う。混ぜて数えない
- 利用料は制作費と別 — 見積もりに利用範囲を明記すれば、同じ1枚で報酬を上乗せできる
- 最低時給を先に決める — 相場は世の中の目安、最低時給は自分の防衛線
- 単価の天井は「動き」で上げられる — 同じ仕事で値上げするより、単価の単位を変える
次に見積もりを聞かれたら、いきなり金額を答える前に、「どこで・どのくらい使いますか」と一言確認してみてください。それだけで、根拠を持って値段を出せるようになります。
この記事のテーマを深めるなら、手元に置いておきたいものです。
イラストの値段で、いちばんもったいないのは、絵の時間ではなく「どの単位でお金をもらうか」を決めないまま手を動かしてしまうことです。用途で分け、土台に最低時給を置き、手取りで考える。それだけで、同じ作業量でも行ける場所が変わります。
そして、その単位は、絵に「動き」を1つ足すだけで、もう一段上げられます。次の一歩を探しているなら、下のバナーからのぞいてみてください。
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