イラストが完成してしまってから、「制作費が高すぎる/払えないと言われた」…そんなトラブルが起きるのは、“事前に料金を提示していないから”です。
フリーランス・イラストレーターに起きがちな料金トラブルを回避するために、この記事では「見積書」のメリットと作り方の例をご紹介いたします。
そもそも、見積書とは何なのか
製品やサービスの取引がある時、前もって
- 金額はいくらなのか
- 取引条件はあるのか
といったことを事前に発注側へ知らせるための書類が「見積書」です。
通常は企業間の取引で請求・作成される書類ですので、個人(フリーランス)にはそもそも請求されなかったり、フリーランス本人も「作る必要がない」と感じている場合があります。
しかし、見積書を作ることによって生まれる様々なメリットがあるのです。
イラストレーターの請求書の書き方。消費税?源泉税?何を書けばいいの?
見積書を作るメリット5つ
様々なメリットが考えられますが、フリーランス・イラストレーターのメリットとしては大きく以下の5つが考えられます。
- 堂々と制作料金の請求ができる
- 後から「そんな金額払えない」と言われない
- 「プロなんだな」と相手に思ってもらえる
- 冷静になった状態で料金を考えることができる
- 追加で指示が入った時に追加料金を請求しやすい
詳しく見ていきましょう。
1. 堂々と制作料金の請求ができる
駆け出しの時は特に、お金の話を一切せずに「イラストを描いてもらいたいんだけど…」と言ってくる人が時々います。
そのまま依頼内容を聞いて制作を受けてしまうと、料金を請求しづらかったり、とんでもない安価だったりすることがありますよね。
最悪の場合は「えっお金取るの?」と謎のキレ方をされることも…。
まずイラストの打診をされた時に「それでは、まずお見積もりを作成いたしますね」と返せるようになれば、料金をうやむやにされたり、無料で頼んでやろうと言う人は消えていきます。
2. 後から「そんな金額払えない」と言われない
「高すぎる」「そんなお金払えない」と言われるのは、事前に料金を提示せず、相手に確認を取ってもらっていないからです。
そして「予算は特に考えていません」と言う人ほど、実際に料金を提示すると「そんなに高いの?」と驚きます。
見積書は「相手に料金を確認・承諾してもらう」ための書類です。その時点で「そんなに払えない」と言われたらご依頼をお断りするか、もし何かしらの条件で安くすることができるのなら、安価にするための条件と再見積を提示しましょう。
3. 「プロなんだな」と相手に思ってもらえる
イラストは仕事ではなく「趣味」だと考えている人が世の中にはまだまだ多くいます。
そういう時、さっと「見積もりをお出ししますね」と言ってちゃんとした書類を出すと、「この人はプロで、仕事としてやっているんだな」と認識してもらえます。
「趣味でやってるんだから安くしてよ」という人は消えます。
4. 冷静になった状態で料金を考えることができる
電話や口頭で「料金はいくらくらいですか?」と言われると、雰囲気に圧されてつい安い料金を口走ってしまったり、後から「あの料金も考えなければいけなかった…」と後悔してしまうことがあります。
「まずお見積を作成して、メールでお送りします」と言えば、一呼吸おくことができますし、冷静な状態で料金を考えることができます。
5. 追加で指示が入った時に追加料金を請求しやすい
制作中、最初に言っていた依頼内容を突然変更したり、追加したりするクライアントが存在します。その場合も「それでは、再見積りいたしますね」と言えば、料金追加の旨が伝えやすいです。
「追加料金がかかるのか」と聞かれる場合は、なぜ追加料金になるのかの説明をし、もしも追加料金にならずに済む方法があるならそれを提案しましょう。
また修正について記載した見積書を事前に渡しておけば、後々のトラブル回避にも繋がります!
んん!!!これは一度は経験したことがあるかと思います😂
経験後、予めお見積書に記すようにしました。そうしてからトラブルなくなりました。謙虚=我慢して受けること認識でかつてはあったけど、依頼者と制作者は金銭⇄成果物(対価)においては対等関係なので我慢して受け入れる必要はないです🤔 https://t.co/RIyqVHBalZ
— なんばちゃん ∥ イラスト・デザイン・ジャグアタトゥー (@Yuki25nanba) June 19, 2021
見積書の作り方(作成例)
こちらは、わたしが実際に使用している見積書のテンプレートです。
お客様からのご依頼内容が明確な場合と、お客様が金額を比較検討したい場合に分けました。
毎回さまざまな内容でご依頼の打診をいただくので、その度に少しずつ構成を変えていますが、基本はおおよそこの形です。
以前は見積・請求・納品書などを作成するソフトで作っていましたが、現在は見積書だけAdobe Illustratorで作成しています。
見積内容が多岐にわたるためと、自由度の高い見積書が作れるからです。
もちろんExelやMacの方ならNumbersを使用して見積書を作っても良いでしょう。
「見積書テンプレート」を配布しているサイトもあるのでそれを利用したり、ご自分でカスタマイズして使いやすい見積書テンプレートを作るのもおすすめです。
それでは、見積書の内容を番号順に見ていきましょう。
- 見積書タイトル
- 依頼主の名前(会社名の場合は「御中」)
- 発行日
- 最も重要なお知らせ
- 制作物の名称
- 割引料金の明示
- 制作料金以外の金額の明示
- 補足事項
- 自分の住所・屋号(のロゴ)・印鑑
Adobe Illustratorで作っていますが、「ちゃんとして見えるように」と「分かりやすいように」を意識して、全体的に“視認性の高い・真面目そうなフォント”を使用します。
とにかく「こいつ本気だ」と思ってもらえる見積書を目指します。
ポイントとなる箇所を詳しく解説していきます。
④最も重要なお知らせ
以前、既存の見積書用ソフトで金額提示をしていた時は、毎回必ずと言っていいほど
「これに送料がかかるんですか?」
「デザイン費は別ですか?」
「これは税抜価格ですか?」
と尋ねられていたので、その質疑応答時間を削減するため、赤字で「全てを含んだ金額(税込価格)です」と表記するようになりました。
⑤制作物の名称
制作物のサイズや枚数を見積書に記入するのは、いざ制作に入る時や印刷所へ入稿する時に
「結局サイズはどうなったんだっけ?」
「枚数は何枚と言われてたっけ?」
とならないためです。
見積書を見返せば依頼内容がすぐ分かるくらいのものを作るようにしています。
⑥割引料金の明示
わたしの制作メニューにはキャラクター割引という制度があるのですが、お客様に「このくらい得したんだな」とはっきり分かっていただけるよう、割引額を明示するようにしています。
⑦制作料金以外の金額の明示
印刷物でない時は、「データ納品費」を明記します。
「データだけもらって自分で印刷所に頼んだ方が安いのか、入稿もまとめてお願いしてしまった方がいいのか」で悩まれる方がいらっしゃるためです。
AIデータやPSDデータの入稿に詳しい方はいいのですが、一般的によく分からないという方が多いので「データだけをもらう方が安くて得する訳ではありませんよ」というのを金額で分かっていただいた方が良いと考えて明示しています。
⑧補足事項
これは伝えておいた方がいいな、という取引条件を備考として書いておきます。
特に「※イラストやデザインなどに細かい指定が入る場合は、上記の限りではありません」は必ず書きます。
なぜかというと、見積時には細かい指示を黙っておいて、料金が確定した後に細かい指示を出してくる人がいるからです。
「作業時間が延長するほどの詳細な指示がある場合、後で追加料金がかかりますよ」と暗に言っておくと、再見積がしやすいです。
⑨自分の住所・屋号(のロゴ)・印鑑
請求書には名前や電話番号などを記載するのですが、わたしは見積書の時には省略します。
今の所それで問題になった事はありませんが、心配な方は書いた方がいいと思います。
単純に屋号を書くだけでなくロゴを使用するのは、「その方がちゃんとしてるっぽく見える」かなと考えているからです。(ロゴがかわいい系なので最初は心配でしたが、他の構成がしっかりしているので「ほっとするアクセント」くらいになっているようです)
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心優しいイラストレーターは特に見積書を作ろう
周囲を見ていると、料金トラブルなどが起きている方は大体「強く言えない、心優しいイラストレーター」のように感じます。
わたしもイラストレーターを始めたばかりの頃はそうでした。
安くしないと仕事がなくなるんじゃないか・生活できなくなるんじゃないかと不安になったり、クライアントが強大な存在に見えて怯えたりしていたものです。
言葉ではっきり言えない方は、書類の力を借りましょう。
心優しいイラストレーターは、生身で戦おうとしがちなので、「見積書」という盾や鎧を装備して楽しく戦ってくださいね。
ごきげんよう、さようなら。
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