イラストの仕事をしていて、こんなふうに感じたことはありませんか。
- 1万円で受けたはずなのに、振り込まれたのは8,000円を切っていた
- 制作会社経由の仕事で、元の予算はいくらだったのか、自分の取り分は何割なのかがまったく見えない
- 「直接受けたほうが得」とよく聞くけれど、本当に切り替えていいのか決めきれない
引かれる金額がモヤモヤするのは、あなたが細かいからではありません。報酬がどこで、何のために引かれているのかが、受ける側からはほとんど見えない仕組みになっているからです。
この記事では、報酬が引かれる場所を3つに分けて整理します。仲介サイトの手数料は各サービスの公式ページで料率を確認し、代理店・制作会社の取り分は、当サイトを運営する制作会社(=イラストレーターに発注している側)の目線で中身を開きます。そのうえで、直接受けると単価が上がる理由と、それでも仲介を経由する理由を並べて、自分はどちらを選ぶかの判断基準まで持ち帰れるようにします。
報酬が引かれる場所は、大きく3つ
まず全体像です。依頼者が払ったお金があなたの口座に届くまでに、減る場所は3つあります。
- 仲介サイトの手数料
ココナラやSKIMA、クラウドワークスなどを通したときに、取引額から差し引かれる料金です。料率は公開されていて、いくら引かれるかを事前に計算できるのが特徴です。 - 代理店・制作会社の取り分
広告主とあなたの間に会社が入るときの取り分です。こちらは料率が公開されないのが普通で、受ける側には元の予算が見えません。「中抜き」と感じやすいのはここです。 - 源泉徴収と振込手数料
会社から報酬を受け取るときに差し引かれる所得税です。仲介サイトの出金手数料や、振込手数料が差し引かれることもあります。源泉徴収は誰かの取り分ではなく、税金の前払いなので、ほかの2つとは性質がまったく違います。
この3つを混ぜたまま「引かれすぎている」と感じると、手を打つ場所を間違えます。①は料率を知れば比べられる、②は中身を知れば交渉の材料になる、③は確定申告で戻ってくる可能性がある。それぞれ対処の仕方が違うので、順番に見ていきます。
仲介サイトの手数料|主要5サービスで何%引かれるか
イラストの仕事でよく使われる仲介サイトの、受ける側(クリエイター)が負担する手数料を、各サービスの公式ヘルプで確認しました(2026年9月時点。料率は改定されることがあるので、使う前に公式ページを見てください)。
| サービス | クリエイター側の手数料(税込) | 1万円の取引で手元に残る額 | 5万円の取引で手元に残る額 |
|---|---|---|---|
| ココナラ | 22% | 7,800円 | 39,000円 |
| クラウドワークス | 10万円以下の部分22%/10万円超〜20万円の部分11%/20万円超の部分5.5%(1契約ごとに計算。時間単価制は1週ごと) | 7,800円 | 39,000円 |
| SKIMA | 取引総額20,000円以下22%/20,001〜50,000円16%/50,001円以上11% | 7,800円 | 42,000円 |
| ランサーズ | 16.5% | 8,350円 | 41,750円 |
| pixivリクエスト | 10% | 9,000円 | 45,000円 |
※取引額は税込で計算。クラウドワークスは公式の料率(20%/10%/5%)に消費税10%を加えた実質の率。出金時には別途、振込手数料がかかるサービスもあります(SKIMAは385円、クラウドワークスは楽天銀行100円・他行500円、ランサーズは楽天銀行・三井住友銀行220円・その他550円〈2026年8月31日振込分から〉、pixivリクエストは売上3万円未満200円・3万円以上300円。ココナラは3,000円以上の振込なら無料)。Skebは条件によって料率が変わるため、最新の料率は公式のクリエイターガイドラインで確認してください。

表から読み取れることは3つです。
- 少額の仕事ほど、引かれる割合が大きい
1万円前後の仕事では、多くのサービスで5分の1以上が手数料になります。 - 段階制のサービスは、金額が上がると率が下がる
SKIMAやクラウドワークスは、1件の金額を大きくするほど実質の負担率が下がります。 - 同じ5万円でも、サービスによって手取りに6,000円の差がある
39,000円と45,000円。月に何件も受けるなら、無視できない差です。
ここで大事なのは、見積もりの段階で手数料を差し引いた手取りで考えることです。「1万円なら受けてもいい」と思った仕事は、実際には7,800円の仕事かもしれません。自分の最低ラインの決め方はイラストの相場と値段の決め方で整理しています。
手数料は何の代金なのか|仲介サイトが引き受けている3つのこと
2割前後と聞くと高く感じますが、手数料は「場所代」だけではありません。仲介サイトが受ける側の代わりに引き受けているのは、主に次の3つです。
- 集客:依頼者を連れてきてくれる。自分で営業しなくても、仕事の方から見つけてもらえる
- 決済:請求書を出す、入金を確認する、催促する、といった事務がいらない
- 未払いの防止:多くのサービスでは依頼者が先に代金を預ける(仮払い)ので、描いたのに払われないという事態が起きにくい
特に3つ目は、軽く見ないほうがいい部分です。国の令和4年度フリーランス実態調査(内閣官房・公正取引委員会・厚生労働省・中小企業庁、2,119人。フリーランス新法(2024年11月施行)より前の調査)では、発注者から納得できない行為を受けたことがある人は約4人に1人(23.0%)。その中で最も多かったのが「報酬の支払いが遅れた・期日に支払われなかった」で、全回答者の11.8%にのぼります。
つまり手数料は、集客と事務と「確実に払ってもらえる安心」をまとめて買っている代金だと考えると、高いか安いかを冷静に判断しやすくなります。
代理店・制作会社の取り分|「中抜き」と感じる前に知っておくこと
次は、会社が間に入るときの取り分です。広告の仕事は、多くの場合こういう順番でお金が流れます。
広告主 → 広告代理店 → 制作会社 → イラストレーター

当サイトを運営する粕田屋は、この図の「制作会社」の位置にいます。以前の記事で、粕田屋が受けた案件の150件中145件が誰かを経由した仕事だったことを紹介しました(イラストの仕事はどこから来るのか)。広告の仕事では、段が重なるのが普通です。
では、各段はどのくらい取っているのか。正直に言うと、制作費の配分に公表された相場はありません。広告代理店の手数料として「15〜20%」という数字がよく語られますが、これは主に広告枠の料金(媒体費)に対する手数料の話で、イラストの制作費がどう分けられているかを示す数字ではありません。案件ごとに、各段が担っている仕事の量で決まっているのが実態です。
そこで、発注している側から見た「取り分の中身」を書きます。制作会社が取り分の代わりに引き受けているのは、たとえば次のようなことです。
- 営業と見積もり:案件を取ってくる。金額や範囲を交渉する
- 仕様を固める:広告主のあいまいな要望を「何を・何点・どの用途で」に翻訳してから渡す
- 修正の窓口:広告主・代理店からの修正をまとめ、筋の通らない要求はこちらで止める
- 仕上がりの責任:納品後に問題が出たとき、広告主に対して責任を負う
- 支払いの約束:広告主からの入金が遅れても、イラストレーターには決めた期日に払う
もちろん、これらの仕事をほとんどせずに取り分だけ取る会社があれば、それは「中抜き」と呼ばれても仕方ありません。見分け方はシンプルで、その会社が間に入ったことで、自分の手間が減っているかどうかです。修正の意図が整理されて届く、仕様が最初から固まっている、支払いが期日どおり。そうであれば、取り分は仕事の代金です。
「引かれている」と誤解しやすい源泉徴収
会社から報酬を受け取ると、請求額より1割ほど少なく振り込まれることがあります。これは多くの場合、源泉徴収です。
国税庁は質疑応答事例で、広告ポスター用のイラストの報酬を例に、「デザインの報酬」として源泉徴収の対象としています。税率は支払金額が100万円以下なら10.21%です。たとえば3万円の報酬なら、3,063円が差し引かれて振り込まれます(請求書で報酬と消費税を分けて書いていれば、消費税の部分は対象外として計算できます)。
ここで押さえておきたいのは2つです。
- これは会社の取り分ではない
差し引かれたお金は、会社があなたの代わりに国へ納めています。確定申告で1年分の税額を計算し直すと、納めすぎていた分は戻ってくることがあります。 - 仲介サイト経由や、個人からの依頼では引かれないこともある
源泉徴収をするかどうかは、支払う側の立場で変わります。「この会社は引かれた、あの依頼は引かれなかった」という違いは、手数料の差ではありません。
手取りを比べるときは、源泉徴収を手数料と一緒に数えないこと。ここを混ぜると、会社経由の仕事が実際より割に合わなく見えてしまいます。
編集部のXでも、源泉徴収の仕組みをまとめています。
直接受けると単価が上がる3つの理由
では、間を通さずに直接受けると何が変わるのか。単価が上がる理由は3つあります。
- 手数料・取り分がそのまま自分の報酬になる
いちばん分かりやすい理由です。仲介サイトなら、1万円の仕事で1,000〜2,200円ほどの差になります。 - 使われ方の対価を、自分で交渉できる
間に会社が入ると、広告主がその絵をどこまで使うのか(媒体・期間・二次利用)が見えないまま、「1点いくら」で受けることになりがちです。直接なら、使用範囲を聞いたうえで使用料を上乗せする交渉を自分でできます。請求の仕方は二次利用・著作権譲渡の料金で詳しく書きました。 - 次の依頼が、自分のところに直接来る
経由の仕事では、広告主が「またこの人に」と思っても、次の依頼は間の会社に届きます。最初から直接の関係で受けた相手なら、継続の依頼そのものが自分の資産になります。
ただし、これは間の人たちが引き受けていた仕事を、全部自分が引き受けるということでもあります。営業、仕様のすり合わせ、修正の交渉、請求、入金の確認、払われなかったときの催促。取り分が増えた分だけ、絵を描かない時間も増えます。
それでも仲介を経由する理由|使い分けの判断基準
直接受けるほうが単価は上がる。それでも多くのイラストレーターが仲介を経由し続けるのは、引かれている分で、自分がやりたくない仕事や、自分ではできない仕事を買っているからです。
どちらを選ぶかは、次の3つの問いで決めると迷いません。
- 引かれている金額で、自分の何時間を買っているか
たとえば仲介サイト経由で月10万円を受けていて、手数料が約2万2,000円だとします。同じ10万円分を自分の窓口(サイト・SNS)から直接受ける仕事で稼ぐとしたら、営業・見積もり・請求に使う時間が月に何時間増えるか。その時間を自分の時給で換算して、2万2,000円より少なければ、直接のほうが得です。多ければ、手数料を払って絵に集中したほうが手元に残ります。 - 払われなかったときに、自分で回収できるか
前の見出しで見たとおり、支払いの遅れや未払いは珍しいことではありません。直接取引では、契約書を交わし、期日を決め、遅れたら催促する。ここに自信がないうちは、仮払いの仕組みがある仲介を使う価値があります。 - その相手から、次の依頼が来そうか
一度きりの依頼なら、仲介を使っても失うものは少ない。逆に、毎月のように絵が要る相手ほど、直接受けたときの差は大きくなります。そういう仕事を自分の窓口から直接受ける割合を増やしていくと、長い目で見て手元に残る額が変わります。
現実的には、全部を直接に切り替えるより、仕事ごとに使い分ける人が多いはずです。新規の出会いは仲介で作り、自分の窓口(サイト・SNS)では別の相手と直接つながる。報酬の問題を「引かれるかどうか」ではなく、「何を買っているか」で見られるようになると、選び方がぶれなくなります。
仲介から直接に移るときの注意|規約違反にならないために
ここは必ず押さえておいてください。仲介サイトで出会った相手と、サイトの外で直接取引することは、多くのサービスで禁止されています。
- ココナラは、サイトの外で直接連絡を取り合うこと、ココナラを通さない取引へ誘導すること、相手からの誘いに応じることも禁止しています
- クラウドワークスも、サービスを介さない直接の契約・支払いを禁止しています
仲介サイトに限らず、制作会社経由の仕事で知り合った広告主と直接取引することも、契約で禁じられていることが多いので注意してください。
「手数料がもったいないから外でやりましょう」と相手から言われても、応じればアカウント停止などの対象になり得ます。直接の関係は、仲介サイトの外で最初から作るのが筋です。自分のサイトやSNSで依頼窓口を持つ、制作会社の「クリエイター募集」に自分から登録する、といった入口です。
経由の仕事で信頼を積み、自分の窓口で新しい相手と直接つながる。仲介は「卒業するもの」ではなく、入口の1つとして残しておくくらいの距離感が、いちばん損をしません。
まとめ
イラストレーターの報酬がどこで引かれているかを整理すると、こうなります。
- 引かれる場所は3つ:仲介サイトの手数料、代理店・制作会社の取り分、源泉徴収と振込手数料
- 仲介サイトの手数料は10〜22%ほど。少額の仕事ほど割合が大きい。見積もりは手取りで考える
- 手数料は集客・決済・未払い防止の代金。会社の取り分も、手間が減っているなら仕事の代金
- 源泉徴収は取り分ではなく税金の前払い。手数料と一緒に数えない
- 直接受けると単価は上がるが、間の人がやっていた仕事も全部引き受けることになる
- 使い分けの基準は「引かれている分で何を買っているか」。仲介サイトの外で直接の窓口を作る
引かれる金額にモヤモヤしていたのは、その分で何を受け取っているのかが見えていなかったからかもしれません。中身が見えれば、払っていい手数料と、自分で取りにいける取り分の区別がつきます。次に仕事を受けるとき、まずは「この仕事の手取りはいくらか」「間の人は何をしてくれているか」を一度だけ書き出してみてください。










