「もっと絵が上手くなりたいのに、何を練習すればいいかわからない」
そんなふうに手が止まってしまうこと、ありますよね。
でも、画力は「ひたすら描く量」だけで決まるわけではありません。
以前、画力は「観察力・描画力・知識力」の3つの要素でできているという記事を書きました。
このうち「知識力」は、知った瞬間から絵に反映できるのが大きな特徴です。
手を動かす練習で伸びる描画力とちがって、「光はこう振る舞う」「この材質はこう見える」と知るだけで、次に描く1枚から説得力が変わる。
今回は、そんな知っておくだけで絵が上手くなるイラストの豆知識を10個紹介します。
どれもプロが当たり前に使っている、光・色・カメラの小技です。頭の片隅に入れておいて、描くときにそっと引き出してください。
動画版はコチラ!
10個の豆知識の全体マップ(光・色と質感・カメラ)
いきなり10個並べると散らかって見えるので、先に見取り図を置いておきます。
今回の豆知識は、大きく3つのグループに分けられます。
■ 光と影のグループ(①⑤⑥⑦)
光がモノに当たって、反射して、影を落とす。この「光のふるまい」を知るグループです。立体感とリアリティの土台になります。
■ 色と質感のグループ(②③④)
「このモノは何でできているか」を、ハイライトや色で伝えるグループです。質感が出ると一気に上手く見えます。
■ カメラとレンズのグループ(⑧⑨⑩)
イラストを「1台のカメラで撮った1枚の画」として見るグループです。空気遠近法・ボケ・被写界深度など、見せたいものを際立たせる小技が入ります。

この地図を頭に入れてから読むと、バラバラの知識が「なるほど、全部つながってるんだ」と腑に落ちやすくなります。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
①物体は光を反射する(材質により差がある)
地味に絵が上手くなる豆知識① pic.twitter.com/BxxY6Se0Ym
— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 19, 2018
我々が目の前のモノを視認できるのは、光があるからです。
そして、あらゆるモノはその光を反射しています。
反射というと鏡やガラスを思い浮かべますが、実は人の皮膚も、木も、石も、土も光を反射しています。
鏡ほど反射量が多くないので見落としがちですが、どんなモノも微量に反射しているんですね。
なぜそうなるか。光は、当たった面の色の成分だけを跳ね返して、残りを吸収する性質があります。だからリンゴは赤く、葉っぱは緑に見える。つまり「色が見える=そのモノが光を反射している」ということです。
反射率はモノによって大きく違います。なので、反射率を意識してその材質を描くと説得力が生まれます。
イラストでどう使うか:近くにあるモノの色を乗せる
反射を意識した「間接光」を表現すると、絵の見栄えがガラッと変わります。
やり方はシンプルで、隣にあるモノの色を、うっすら乗せるだけです。
たとえば赤い服の人物なら、あごの下や手のひらにほんのり赤みを乗せる。草むらに立つキャラなら、足元に緑を乗せる。
「光を受けた物体が反射して、周りのモノを照らしている」という状態を再現できるわけです。
この隣の色を少し乗せる一手間だけで、ぐっとリアリティが出ます。デジタルなら「オーバーレイ」や「スクリーン」レイヤーで薄く乗せると扱いやすいですよ。
②材質はハイライトで表現できる
地味に絵がうまくなる豆知識その②
ちょこちょこあげていきますー^^参考になりましたら幸いです! pic.twitter.com/xZzBKU0GAP— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 19, 2018
①で反射光の話をしましたが、物体の最も明るい部分(ハイライト)の出方で、モノの材質を表現できます。
ポイントは2つだけです。
- 表面がツルツルの物体:鏡のように、明るくくっきりしたハイライトになる
- 表面がザラザラの物体:光が拡散して、ぼんやり広がったハイライトになる
なぜそうなるか。ツルツルの面は、光がそろった方向に跳ね返る(鏡面反射)ので、小さく鋭いハイライトになります。ザラザラの面は、細かい凹凸が光をいろんな方向にばらまく(拡散反射)ので、広くぼやけたハイライトになるんですね。
この2点をおさえておくだけで、金属・プラスチック・陶器・布・肌を「ハイライトの形」で描き分けられます。
ちなみに同じ木や鉄でも、研磨されているか否かでハイライトの出方は変わります。つやを出したいなら、ハイライトを小さく白く。マットに見せたいなら、広くグレーっぽく。この引き出しがあるだけで質感の説得力が段違いになります。
③水面のハイライトは手前と奥でわけて描く
地味に絵がうまくなる豆知識その③ pic.twitter.com/QU3dmVkTBg
— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 19, 2018
水面は、遠くになるにつれて光をよく反射します。
これはフレネル反射と呼ばれる現象です。小難しい理論なので、ざっくりと
「水面は、視線に近い手前は透き通って見えるが、遠くになるほど鏡のように反射する」
と覚えておけばOKです。
なぜそうなるか。水のような透明な面は、浅い角度(遠く=水面をほぼ真横から見る位置)ほど反射が強くなり、真上から見下ろす角度では透けて底が見える、という性質があります。見る角度が反射の量を決めているわけです。
実際に湖や川を見てみると、足元は底が透けて見えるのに、対岸のほうは空が映り込んでいるのがわかります。
この理屈をもとに水面を描くときは、手前は透けさせ、奥は鏡のように反射させるとリアリティが出ます。
そして同じ理屈は球体にも応用できます。球体は、フチに回り込むほど鏡のように強く反射します。フチは視線に対して一番浅い角度=一番「奥」にあたるからです。ガラス玉や金属球を描くときに効く小技です。
④リアリティを追求するなら原色は使わない
地味に絵が上手くなる豆知識④ pic.twitter.com/1hl72SbHCW
— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 20, 2018
木は茶色、空や海は青、水色……と一色のベタ塗りで済ませると、どうしても初心者っぽくなりがちです。
「じゃあ何色で塗ればいいの?」と混乱しますよね。
そこで思い出してほしいのが、①で話した反射光・間接光の理論です。
隣にあるモノの色を、材質に合わせて反射量を調整して乗せる。
これだけでも雰囲気はだいぶ変わります。
なぜそうなるか。現実の「木」は、空からの青い光や地面からの照り返しを受けていて、純粋な茶色一色にはなりません。影の部分には空の青が、光の部分には太陽の暖色が混ざる。だから一色のベタ塗りは「不自然」に見えるんですね。影に少し寒色、光に少し暖色を足すだけで、ぐっと自然になります。
イラストやアート表現では、あえてポップさを出すために原色を使うこともあります。
リアル路線でなければ全然OK。「この絵で何を見せたいか」を理解したうえで、色味と表現方法を選びましょう。「リアルだから正解」ではなく、目的に合わせて使い分けるのが大事です。
⑤強い光に照らされると人体のフチは赤く光る
地味に絵が上手くなる豆知識⑤
サブサーフェススキャッタリングとかなんとか言われたりしますよ。 pic.twitter.com/0EYaCQ5z4l— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 20, 2018
逆光で強く照らされると、人体(特に手、鼻、耳たぶ)のフチが赤っぽく光って見えます。
これはサブサーフェススキャッタリング(表面下散乱)と呼ばれる現象です。
なぜそうなるか。皮膚は完全な不透明ではなく、光が少し内部に入り込んでから散乱して出てきます。このとき、皮膚の下を通った光は血液の色の影響を受けて赤っぽくなる。だから、光が透けやすい薄い部分(耳たぶ・指の間・鼻のフチ)ほど、赤く発光したように見えるんですね。
イラストに取り入れると、ドラマチックで体温を感じる雰囲気を演出できます。
使いどころは、逆光・夕日・強い照明のシーン。キャラの輪郭に沿って、オレンジ〜赤をうっすら乗せてみてください。一気に「空気感のある絵」になります。
⑥影の濃さと輪郭には理由がある
地味に絵が上手くなる豆知識⑥
当たり前のことだけど再確認! pic.twitter.com/l4BLpKC98f— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 20, 2018
影には、知っておくと一気に説得力が増すルールがあります。
影は、影を落とす物体から距離が離れるほど、輪郭がぼやけていきます。そして光源が強いほど、影は濃くなります。
「当たり前やん」と思うかもしれません。でも、ここでは実際に当たり前のことしか書いていません。
自然界には原色が無い、材質はハイライトで表現できる……パッと見でもわかる「当たり前」なんです。
そこに気づけるか気づけないかで、表現の幅は大きく変わります。疑いながら、よーく観察してみましょう。
なぜ輪郭がぼやけるか。太陽や照明には必ず「大きさ」があります。点ではなく面で光っているので、影のフチには「完全な影」と「光が回り込む半影」の境目ができる。物体から離れるほどこの半影が広がって、輪郭がぼやけていくわけです。
もうひとつ覚えておきたいのが、モノ同士が接している部分・密集している部分は、通常より影が暗くなるということ。間接光や反射光が入り込めないからです(アンビエントオクルージョンと呼ばれます)。指の股、置いた物の真下、髪の毛の根元などを少し暗く締めると、立体の接地感がグッと上がります。
⑦2つの光源を意識して描くとイラストが締まる
地味に絵が上手くなる豆知識⑦
キャラクターは光源を2つ意識してライティングすると良い感じに! pic.twitter.com/Wy6mTvKnDL— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 20, 2018
光源を2つ設定して描くと、イラストがぐっと良い感じになります。
- メインライト(主役の光。いちばん強く、形を決める)
- 補助ライト(フィルライト。影を少し起こして立体を見せる)
この2つを意識して描きましょう。補助ライトは、メインライトの反対側に置くイメージです。
なぜ2灯なのか。1灯だけだと、影の部分が真っ黒につぶれて情報が失われがちです。反対側から弱い光を当てると、影の中にもうっすら形が見えて、立体がきれいに回り込む。写真やアニメのライティングでも定番の考え方です。
さらにリアリティを追求するなら、この2灯に加えて「反射光(周囲から跳ね返ってくる光)」も意識すると、それっぽくなります。
空間の中には、あらゆる方向に光の通り道ができている。そう意識するだけで、ライティングの設計が一段うまくなります。
⑧空気遠近法で奥行きを出す
地味に絵が上手くなる豆知識⑧
KUUKI-ENKINHOOO!! pic.twitter.com/iaj5TPEa1q— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 20, 2018
風景画を描くとき、遠くのものほど空の色に近い色合いにしていくと、ぐっと遠近感が出ます。
これを空気遠近法と呼びます。
なぜそうなるか。空気中には、塵や水蒸気など、光を散らすものがたくさん浮いています。視点より遠くにいくほど、間にあるこれらの量が増えていくので、光が散乱して、遠くのものほどコントラストが下がり、青白くかすんで見える。遠くの山が青っぽく見えるのはこのためです。
ポイントは3つ。遠くのものほど「①色が薄くなる」「②コントラストが下がる」「③空の色(多くは青み)に寄っていく」。
イラストでは、そんなに遠くないものにもこの技をあえて使って、手前のキャラを引き立てたりします。背景を少しかすませるだけで、主役が前に出てきますよ。
⑨光ボケの形は画面内で統一する
絵が地味に上手くなる豆知識⑨
光の表現について。でも絵の表現は自由なので、必ずしもこうあるべきってわけではない。知識として頭の片隅においといてください。。 pic.twitter.com/eq19lilUZN— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 21, 2018
背景のボケ(玉ボケ)にも、実は形があります。丸、六角形……見たことがありますよね。
この形は、カメラのレンズや絞り羽根の形で決まります。
写真や映像の場合、当たり前ですが撮影しているレンズは1つです。
なので、通常、ひとつの画面内にあるボケは全部同じ形になります。
ひとつの画面内に、五角形のボケと六角形のボケが同時に現れることはない、と覚えておきましょう。ここがバラバラだと、無意識に「なんか変」という違和感を生みます。
もうひとつ注意点。レンズフレアのゴースト(光の玉の列)は、画面の中心を基準に並びます。イラストの端っこにぽつんとレンズフレアを描くと違和感が出てしまうので、光源とフレアと画面中心の関係を意識してください。
⑩被写界深度で主役を際立たせる
地味に絵が上手くなる豆知識⑩ pic.twitter.com/pWFfQAwRLz
— イラストレーター生存戦略の粕田 (@ksd_illust) August 21, 2018
見せたい主役(キャラやモノ)をクッキリ描いて、他をぼかす。これだけで「この絵で何を見てほしいか」をはっきり主張できます。
これはカメラ撮影の「被写界深度」からきている考え方です。
なぜそうなるか。レンズでピントを合わせられる距離には幅があり、その幅から外れたもの(手前すぎ・奥すぎ)はボケます。この「ピントが合う位置」と「あえて外す位置」を作ることで、主役だけが際立つわけです。
注意したいのは、ボケは「カメラからの距離」で決まるということ。主役と同じ距離にあるものは、主役と同じようにピントが合います。
なので、カメラからの距離感を無視してバラバラにボケをつけると、画面が破綻します。「どこから見ているか(カメラ位置)」を決めてから、距離に応じてボケを設計しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 豆知識はどうやって覚えればいい?
丸暗記しようとしなくて大丈夫です。おすすめは「現実で1回確認する」こと。
たとえば②のハイライトなら、手元のコップとマグカップを見比べる。⑧の空気遠近法なら、遠くの建物の色を見る。
一度「ほんとだ」と自分の目で確認した知識は忘れません。今回の見取り図(光・色と質感・カメラ)とセットで、現実を観察グセにしてしまうのが近道です。
Q2. 初心者はどれから取り入れればいい?
効果を実感しやすいのは、⑦の2灯ライティングと①の反射光(隣の色を乗せる)です。
この2つは手数が少ないのに、絵の立体感とリアリティが目に見えて変わります。慣れてきたら④の色づかい、⑩の被写界深度へ広げていきましょう。
Q3. 厚塗りとアニメ塗りで、使う豆知識は変わる?
土台の理屈(光がどう振る舞うか)は共通です。変わるのは「どこまで表現するか」。
厚塗りは、①②⑤の反射・質感・表面下散乱までしっかり描き込むと映えます。
アニメ塗りは、情報を整理して「影の形」と「ハイライトの位置」で見せるのが基本。⑥の影のルールと⑦の2灯を押さえておけば、少ない色数でも立体が成立します。
Q4. 写真を参考にするときの注意点は?
写真は最高の資料ですが、「そのまま塗り分ける」のはおすすめしません。
カメラは現実をそのまま写すので、イラストとしては情報が多すぎたり、暗部がつぶれていたりします。
大事なのは、写真から「光がどう当たっているか」「どこに反射光があるか」という理屈を読み取ること。見たままをなぞるのではなく、今回の豆知識をフィルターにして観察すると、同じ写真から得られるものが段違いに増えます。
Q5. 独学でも画力は上がる?
上がります。ただし「ただ枚数を描く」だけだと伸び悩みやすい。
観察力・描画力・知識力の3つをバランスよく回すのがコツです。今回の知識力を仕入れて、現実を観察し、手を動かす。このループが、独学でいちばん効率よく画力を上げる道です。
まとめ:知識は、描く前から効く武器
今回紹介した10個の豆知識を、もう一度おさらいします。
- 光と影:①反射光/⑤表面下散乱/⑥影のルール/⑦2灯ライティング
- 色と質感:②ハイライトで材質表現/③水面のフレネル反射/④原色を避ける
- カメラとレンズ:⑧空気遠近法/⑨ボケの形の統一/⑩被写界深度
どれも、知った瞬間から次の1枚に反映できるものばかりです。
手を動かす練習も大事ですが、「なぜそう見えるのか」を知っておくと、同じ練習量でも伸び方が変わります。
是非、頭の片隅にそっとしのばせておいて、描くときに引き出して活用してください。
もっと体系的に光と色を学びたい人には、次の2冊がおすすめです。











