絵を描く、物を作る、作品を見る…
何かしら創作に携わっている方なら一度は「美術大学」を考えたことがあるのではないでしょうか?
今回は駆け出しイラストレーター・みこが実際に通っていた美大について
美術大学ってどんなところなの?
という疑問を少しだけ解消できるように書いてみました。
映像科に通っていたので映像関連の話が多めになります。
- 今まさに進路に悩んでる方
- かつて美大に憧れた方
- はたまた「自分も通ってたよ!」という方
みなさまに楽しんでいただければ幸いです。
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入ってビックリ!美大の想像と現実のギャップ
大学入学前の私は、
「美術大学とは絵を描くのが好きで好きで、物を作るのが好きで好きで、自分のこだわりをとても大事にしていて、お互いを高め合い…というクリエイターな方々の集まる場所」
だと思っていました。
間違った認識ではないのですが、偏見にまみれていた私が入学後に衝撃的だったギャップをいくつかご紹介しますね。
①「美大生=オシャレ」ではない…!創作活動に泥臭く・熱く取り組む人々
美術に携わる人ってこだわりが強い分、服装がオシャレなイメージがあったんです。
選ぶ洋服や小物の使い方、持ち物なんかも個性があるんだろうな、と。
実際はオシャレな人って一部で、元々ファッションに興味のある人や、デザイン科や建築科などセンスを求められる学科に多い、という印象でした。
ファッションに関して人並か無頓着な人が意外と多いんです。
制作をしてみると感じるのですが、物作りって気持ちの面でも時間や労力の面でもすごくエネルギーの消費をするんですよね。
自分の身だしなみよりも自分の作品にそのエネルギーを注いでいるというのが理由なのだろうなと思いました。
美大の面白いところのひとつが「利益とか効率なんて度外視!オタク気質で作品に打ち込む人」がたくさん居たことでした。
②同じ「好き」でも同じじゃない…!違う視点を発見できる友人関係
例えば同じ「アニメ好き」となれば、ストーリーやキャラクター、登場人物のビジュアルなど、共有するのはこの辺りなのかな、と思っていました。
まず驚きだったのが深夜アニメ好きがそんなにいなかったこと。
「知ってるよー」という程度で同じアニメ好きでも、ニュアンスで言えば「アニメーションが好き」という人が半数くらい。
じゃあアニメーション好きがどこに魅力を感じているかというと、アニメの動きやエフェクト、背景の書き込み具合・動き具合などなど、私にはない視点で心惹かれているんです。
「好き」のベクトルがそれぞれ違う方を向いている。
同志を見つけるより、そういう人たちの話を聞いたり教えてもらったりすることで、自分の知識や見方が広がっていく友人関係を築いていました。
③技術を教わる場所ではない…!答えのないものを学ぶということ
私の通っていた大学の授業はざっくり分けると「実技」と「座学」がありました。
この実技についてですが、授業内容としては課題(テーマ)を与えられ、制作と講評を行うのが主な内容で、技術的指導は特にないんです。
作ってる途中で「こんな風に進めたいんだけど・・・」と相談すれば、もちろんアドバイスはもらえます。
ですがデッサンのコツやツールの使い方、上手な見せ方のようなものをレクチャーするような授業はほとんどありませんでした。
技術面は課題を進める上で必要なら自分で身につける、というのが基本のスタンスです。
美術は答えのある学問ではないが故に、はっきりと道標をもらうことはあまりありません。
各々が自分の好きなもの・作りたいものに向かって、迷いながら進めていくような環境です。
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美大の授業について
実技編
まずは作る勉強・実技編です。
実技は先ほども触れたように課題(テーマ)を与えられ、制作と講評を行うのが主な内容です。
その課題の内容は面白いものが多く、私が受けた授業は
- フィルムカメラを使用して自分で撮影、フィルム現像、写真現像を行い最終的に組写真を提出
- 設定のないセリフのみの短い台本をもらい、グループでその内容を吟味、役者や演出など役割分担、後に実演発表
などがありました。
また美術を学びに学校へ通う醍醐味のひとつに、自分の作ったものに対する講評をもらえるという点があります。
今はSNSが発展して、作品に対する反応がもらいやすくなってはいるものの、専門家である講師の率直な感想や意見がもらえるというのは貴重な体験です。
また講評の時には、何を考え、どういう意図で作ったかを伝える場面も出てきます。
作品と共に自分をさらけ出すことはなかなかできる経験ではありません。
自分の作ったものが周りにどのように映るのか、また他の人が作ったものを自分がどのように受け取るのか、実技の授業での面白いところでした。
座学編
実技が実際に手を動かして制作する授業だとすると、もう一つ「座学」と呼ばれる知識面の授業がありました。
学科ごとの必須科目もあり専門分野の知識も学べますが、ここでは自分で選ぶ選択科目についてぜひ紹介したいと思います。
選択科目については卒業までに取得する単位数があるので、自分で調整していきます。
その授業の一部が
- 植物学
- 初級イタリア語
- 色彩学
- アートマネージメント
- 文化人類学
- 音楽学演習
- 体育
・・・などなど「それ美術に直接関係あるの!?」みたいな内容だったりします。
作るのが好きなだけでなく、様々な方向にアンテナを張って大学生活を楽しんでる人が多かったです。
卒業後の進路について
卒業後の進路については、一般的に美大卒は就職が難しいと言われています。
ですが私の周りで就職活動に取り組んでいた人で、就職できなかった人はいませんでした。
学科にもよりますが、しっかり準備と対策をすればその点はそんなに心配いらないのかな、という印象です。
では卒業後どんな進路の選択肢があるのか、私の周りの人を具体例にいくつか挙げていきたいと思います。
- 大学院へ進学
まだ学び足りない!まだ働きたくない!などなど、理由は様々ですが大学院へ行く人もチラホラいました。
同じ大学の院へ行ったり、他大学の院へ行ったりと選択肢は様々です。 - 制作会社へ就職
私が映像学科にいたこともあり、アニメやCG、映画などの制作会社に入社する人が多めでした。
大学で学んだことを直接的に活かせますし、監督になりたいなど目標がある場合はステップアップとして制作会社を選ぶようです。
(ただブラックな面も多いのでそこだけは覚悟が必要そうです・・・) - 一般企業へ就職
事務職などの一般職として企業に就職する方もいました。
仕事にはせず趣味として創作活動を続けたい、という人はこの選択をしているようです。
また絵を描く・デザインが得意な場合は、仕事で活かせる面もゼロではなく意外と重宝されたりもするようです。 - 美術講師
教員免許の取れる課程を修了すれば、美術の先生として学校に勤務することも可能です。
在学中に教員免許のための勉強が必要になってきますが、持っていて損はないという考えで取得を目指す人は多かったです。 - 作家活動
大学在学中にすでに活躍している人は、卒業後もそのまま作家として活動するケースもありました。
また自分の作品を作り続けることを大事にしたい人も、就職せずに創作活動を続けています。
SNSなどを使って作品を発表したり、展示を開催したり、依頼がきて仕事をしたり・・・とアーティストとして活躍しています。 - 海外で仕事
日本の企業に就職せず、卒業後海外で仕事をしている人もいます。
現在カナダで仕事をしている人は契約社員のような形で現地で仕事をしています。
映像関連は海外が本場なので、大きな仕事に携わることができ、やりがいをすごく感じているそうです。
行ってよかった!美術大学のメリット
私が体感した美術という専門分野に特化した大学へ行くことのメリットをお話しますね。
周りから刺激がもらえる
私の場合一番はこれ。
入学当初ふわっとやりたいことがあったものの、自分でどのように取り組めばいいかわからなかった私は、周りの友人や先輩で積極的に動いている人の制作に関わるところから始めました。
学校の課題とは別に自分の作りたいものを制作する「自主制作」をしている人が大半なので、まずはそこに携わっていました。
具体的なビジョンがある人はまだしも、確固たる自分がまだない人にとっては周りの動きを参考にしたり、刺激がもらえる環境というのは利点なのではないでしょうか。
最終的には卒業制作があるので自分で作ることに行きつくのですが、少しずつステップアップするには良い環境だと思います。
情報が集まってくる
教授も生徒も美術好きが集まっているので、美術や制作に関する情報が集まりやすい環境になっています。
展示や講習の告知もありますし、外部の方を呼んで大学内で講演が開かれたりもします。(人気の講師だと会場が満員で立ち見をする人が出ることも!)
美大卒は自己紹介として使える
社会人になってから強く感じたのは、「美大に通っていた=作るのが好き」という自己紹介に自然となることです。
そこから話を広げてもらえたり、面接の際も少し加味してもらえたりと、自分自身の輪郭線の一部になる感覚があります。
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美大に入って気を付けたいこと
ただ美大に入ったからと言って、自動的に楽しいわけではありません。
入学してから大変だったこと、意識したことも少し紹介しますね。
能動的でないとつまらない!
情報が集まってたり、美術好きが集まっている環境ではありますが、放っておいても楽しめるか、と言われたらそうでもありません。
積極的に制作に参加したり、空いてる時間で展示を見に行ったりと、自ら行動を起こさないと美術大学を堪能するのは難しいかな、と感じていました。
課題と自主制作の並行
能動的に動いていくと、自主制作に取り掛かるぞ!となる人が多いと思います。
場合によっては課題&自主制作&他の人の制作の手伝い、なんてことも・・・
ここにさらにバイトやサークル活動、一人暮らしの場合は自分の生活のことなんかも入ってくるのでややキャパオーバー気味になることもあります。(制作現場がピリピリしたりもする・・・)
体調管理もしっかりしつつバランスを取って制作に取り組むことも大事だなと痛感しました。
なんとなく常に批評されている感覚
個人差はありますが自分の作ったものが人に見られる前提なので、周りの評価が気になる感覚がありました。
自分より魅力的な作品を作る人がごまんといる環境なので、心のどこかに劣等感もずっとあるような気持ちになります。
話を聞いてみると程度の差はありますが、誰しもそのような感覚を持っていて、自分の気持ちとの戦いもあるのだろうなと思います。
大学はひとつの通過点
美術大学という環境は刺激的で、個人的には行ってみてよかったな、と思っています。
社会人になってからイラストやデザインを仕事としてやっていけてる基盤は、大学時代に培われたと感じています。
もし興味のある人は資料を取り寄せたり、文化祭へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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