落武者と申します。
以前TV業界下請けイラストレーターの記事を書かせて頂いたものです。
今回はTV業界で勤める前に働いていた似顔絵業界について書きたいと思います。
似顔絵業界・似顔絵師とは、よくショッピングモールやイベント会場などで即席で絵を描いてくれるあれです。
なんとなく存在は知ってる方は多いと思いますが、内情を知ってる方はあまりいないでしょう。
- そもそもどうやってなるの?
- 給料はいいの?
- 似顔絵会社は儲かるの?
- 勤務体系は?
など、疑問に感じた方もいるのではないでしょうか。
という訳でそこら辺の話を書いていこうと思います。
似顔絵師になりたい!興味があるという方に読んでいただけると嬉しいです。
似顔絵師のなりかた
まずどうやってなんの?って話ですが、実は町で見かける似顔絵師には
- 完全フリーで働く人
- 会社員として働いている人
の2種類います。
僕は似顔絵会社の会社員として働いていましたので、会社員としてのなり方について書いていきます。
まず会社としてやっている場合だいたい企業HPがあり、そこで募集をかけている場合が多いです。もちろん求人サイトに出てる場合もあります。
そしてそこから採用担当に連絡し、ポートフォリオを出し、面接、実技と段階を踏んでいくことが一般的かと思います。
ちなみに美大や専門卒でなくとも応募できる場合が多いです。
僕が働いていた会社で採用時に重視していたポイントは以下です。
ポートフォリオ
まずポートフォリオについてですが、未経験者も募集してることから結構雑なポートフォリオが送られてくることがあります笑
まずそこでふるいにかけられます。
描いた絵をホッチキスで止めて封筒に入れただけの物や、バカでかいキャンバスをそのまま郵送してきたり、メールにそのまま画像添付で送って来たり…
確かに未経験者だとポートフォリオの送り方を知らない方も多いと思いますが、適当に送れば当たり前に落とされます。
ネットなどで調べればわかることですので、正しいポートフォリオの作り方と送り方は理解しときましょう。
ちなみに絵に関しては似顔絵の技術ももちろんですが、基礎的なデッサン力を見られことが多いです。
というのも似顔絵業界というのはそれぞれ独自の技法がありますので、似顔絵の描き方的なのは入社後の研修などで教え込まれます。
そのため即戦力を求められてる場合以外、最低限の画力があればここはパスできます。
もちろん似顔絵の技術はあった方がいいですが、変に癖がついていると敬遠される場合もありますの注意が必要です。
面接
続いて面接についてですが、これは何といっても明るく礼儀正しい人が好まれます。
似顔絵の仕事は超がつくほどの接客業です。
考えてみればわかりますが、お客さんと面と向かいあって描くわけですから、
- しゃべれない
- 暗い
- 礼儀がない
なんてのは論外です笑
それにやってみると分かりますが、本当にお客さんを目の前に描くというのはめちゃくちゃ緊張します。
僕も最初のお客さんを描くときは震えが止まりませんでした・・・笑
なので絵の技術もよりも、人間性を重視されることもあります。
実技
最後に実技ですが、これは研修後にテストがある場合と、研修前にテストを行う場合、前後2回テストを行う場合等会社によってさまざまなパターンがあります。
ただ実技無しでいきなり似顔絵師デビューをさせるような会社はないはずです。
実技テストの内容は恐らくどこも「実際にお客さんを描く!」ということがほとんどでしょう。
身内を描くのと初見のお客さんを描くのでは雲泥の差がありますから、会社としては必ず見ておきたいポイントです。
とはいえ全く見込みのない人にわざわざ実技試験を行うことはないでしょうから、ポートフォリオや面接で「この人なら欲しいかも…」と思って初めて実技テストをやるわけです。
もちろん緊張していつもよりうまく描けないことはある程度考慮してくれてます。
なのでとにかく自信もってやることが大事です。
ここで落ちるパターンは決まっています。
緊張で絵がうまく描けないことで焦ってコミュニケーションを一切取れなくなるパターンです。黄金パターンですね…
気持ちは痛い程わかりますが、たとえ絵が微妙と思ってもコミュニケーションだけは忘れてはなりません。
最悪自信もった感じでやっていればお客さんは満足してくれることが多いです。
そのお客さんとのやり取りを見て合格を決める場合もあります。
逆に「あ、やべっ」とか「ミスった・・・」とかは絶対に口に出して言ってはいけません。
あと絵を描いていてつい保険を打ちたくて「あまり似てないかもしれませんが…」等と最後に言ってしまう方もいるのですが、これも絶対NGです。
その一言が不合格の決め手になるかもしれません。
似顔絵師の給料事情
給料体系は会社によって変わってきますが、
- 給料制
- 歩合制
- 基本給+歩合
の3パターンありますが、ほとんどの会社が歩合制か基本給+歩合です。
僕が勤めていたところは歩合制でした。
歩合になると月によって大きく収入が変わってきます。
更に会社の店舗出店数や、出店場所の良し悪しで大きな変化もでます。
ちなみに僕は最低月収8万、最高で20万程でした…
低っ!て思われるかもしれませんが、これは僕の技量や接客スキルが乏しかったのが原因です笑
本当にスキルの高い人が好条件の出店場所で描ければ月100万とかも夢じゃないです。(ほぼ夢ですが)
歩合率について
歩合率について話しておくと、僕が勤めていた会社は約50%でした。
これも会社によって変わるので、入る前に必ず確認しといたほうが良いです。
似顔絵師が1日に稼げる額
仮に50%で1日で似顔絵師が稼げる金額を算出してみます。
まず即席で描いてもらう似顔絵の平均単価はだいたい2000円前後が多いかと思います。
つまり1枚描くと1000円前後になります(とりあえず1000円とします)
1人描くスピードは人によりけりですがだいたい10~20分程になります。
お会計や説明の時間などを差し引くと、だいたい1時間で頑張れば5人描けます。
つまり時給5000円です。
もし8時間描き続ければ1日4万円程稼げるわけです。
更に実際には3人を1枚に描く場合、時間短縮出来たり、営業時間が長かったりで5万円程稼げるときもあります。
中にはもっと稼いで伝説化してる人もいましたが、正直どうやってそんなにさばいていたのか未だよくわかりません・・・笑
似顔絵師の最低日当
意外と稼げるんだ!と思われるかもしれませんが・・・これは本当に好条件の場所で描くのが早い人ならって話です。
逆に稼げない時はどのくらい?となりますよね。
0円です。
本当に油断していると1日誰も寄ってくれないなんてこともあります・・・笑
特に観光地でもなんでもない場所のイ〇ンなどは稼げない時はまったく稼げません。
逆に遊園地内や有名観光スポット内では1日描きっぱなしなどが普通にあります。
似顔絵師になって良かったこと
お金の話をしたところで、お金以外のメリットを話していいこうと思います。
仕事が楽しい
慣れてくると本当に楽しい仕事です。
何て言ったって自分が描いた絵のリアクションがその場で生で見る事が出来るのですから。
「似てる~」なんて笑いながら言ってくれたりすると本当に嬉しいです。
それに実は結構リピーターがついてくれることが多いのです。
以前描いた人がまた来てくれた時は本当にありがたくて涙が出そうになります。
あまり活気がないイ〇ンなどでも、こういったリピーターがきてくれることで売り上げが伸びたりもします。
似顔絵師のシフト情報はHPにでますので、それを見てわざわざ遠い所から来てくれる人もいます。
正直こんなに嬉しい思いが出来る仕事はそうないと思います。
仕事が長いと感じる事が少ない
よく退屈なことが苦痛な仕事がありますが、似顔絵師はそんなことはありません。
お客さんと会話しながら描いていると時間は驚くほどあっという間に過ぎていきます。
最悪お客さんが来ない時は、HPや店舗に飾る絵を描いたりして時間を潰しますので暇すぎて辛い…なんて思うことはほとんどありませんでした。
フリーでもやっていけるスキルが身につく
もし会社を辞める事になってもスキルが身につくので無駄になりません。
特にリピーターを多く持っている人だと、会社を辞めてフリーになってもすぐにやっていけるだけの稼ぎになる場合もあります。
それに似顔絵というのは
- 結婚式のウェルカムボード
- 退職時の寄せ書き用
- 名刺
- アイコン
等様々な用途で使えるので、かなり重宝されるスキルです。
同窓会などでも似顔絵師といえばちょっとした人気者になれます笑
似顔絵師の辛い所
似顔絵師は良い所もありますが、もちろん辛い所もたくさんあります。
クレームがダイレクト
やっぱり毎回描いていればいつか怒るお客さんもでて来ます。
自分でも失敗したなぁと思った時に怒られるならまだしも、うまくいったと思ったのに怒られた時は凹みます。
それに自分が一から作って提供した物に対するクレームはやっぱり辛いです。
ただやっぱり自分を美化している人や、絵のタッチを理解してくれない人、最初から茶化す目的の人がいるので避けられないクレームがあることも理解しときましょう。
給料が安定しない
これは歩合制の会社に限りますが、本当に稼げない時はとても暮せない金額しか稼げない事もあります。
これが原因で辞めざるを得ないという人も多いかと思います。
冷やかしや馬鹿にしてくる人がいる
たまにですが、店舗に飾ってある絵を「似てね~」とか大きい声で言う人や、「こんなんで金とるんすか笑」みたいな事いってくる人もいます。
悪い所はちゃんと受け止めなきゃいけないのですが、ただただ馬鹿にしたい人や説教が好きな人もいるので、気にしすぎてはいけません。病んでしまいます笑
似顔絵師ウラ話
最後に知って得する(?)似顔絵師のウラ話を書いていきます。
飾ってある絵と描いてもらう絵は料金が違うことがある
これ結構多いのですが、店舗などに飾ってある絵って見栄えをよくするため、何時間もかけて描いた芸能人の絵や特注商品をサンプルとして飾ってあることが多いんですよね。
それを見て「このクオリティで描いてもらえる!」と思っていざ描いてもらってがっかりされる方が多いです。
正直これは店舗側で明確に表示すべきなのですが・・・実際紛らわしくなってるところが多いです。
しかし絶対に即席で描くタッチのサンプルもあるはずなので、描いてもらう場合は事前にその辺をよく確認しときましょう。
ちなみに特注商品とは数日から1ヶ月ほど時間を頂いて、後日納品するというもので、その分値段もクオリティ高いです。
安い物でだいたい即席で描く場合の倍ぐらいの値段ですが、高いと数万から数十万になることもあります。
似顔絵師よってクオリティに雲泥の差がでる
これは本当に気を付けなきゃいけない問題です笑
何気なく書いてもらった人が10年のベテランと入って数日の新人ではすごい差が生まれます。
また人によって可愛い系だったり面白系だったりもするので、必ず描いてもらう前にその人のポートフォリオ(作品集)を確認したほうが良いです。
特注で描いてもらう場合も、何気なく店舗で頼むとその時対応した人が描く事になります。
みんな稼ぐために必死ですから、「好きな似顔絵師をお選びください!」なんてことは言ってくれないことが多いです笑
事前に似顔絵を描いてほしいと思ったらHPで絵柄を見て、気に入っ人を狙って行くことをおすすめします。
写真で描く場合料金が上がる可能性がある
全部がそうなのかわかりませんが、通常似顔絵を店舗で描いてもらう場合は、生で描いてもらう方が安いです。写真だと+500円とかかかります。
理由は同じ料金なら写真でやりたがる人が多いからです笑
実は似顔絵師側からしたら写真より生で描かせてもらいたいんですよね。
その方が見物人が増えて「自分もやりたい!」と思ってくれる人がでてきて、盛り上がるからです。
それに誰も座ってないとどうしても近寄りがたくなっちゃいますから。
ウェルカムボードは特注がおすすめ
結構似顔絵屋さんをたまたま見つけ、そのままのノリで「ウェルカムボード描いてください!」と頼まれる方が多いですが、出来るなら特注をおすすめします。
料金的には2~3万前後ぐらいが相場かと思いますが、それでも一生ものと考えたら特注で頼む価値ありです。
即席で描く場合どうしても時間や描く画材が限られてきますので、クオリティが低くなりやすいです。
そして最悪なのが混雑時、似顔絵師が焦って手抜きになってしまう場合があります。
何時間も描きっぱなしの場合もありますので疲れがでてる場合もあります。
特注ならじっくりと本領を発揮した絵が描けるので安心です。それに下書きの時点で確認できたりするので、全然似てない絵が来た!なんてこともないです。
数十万から数百万かかる結婚式ですから、ウェルカムボードは是非特注で一生の思い出を制作してもらいましょう!
似顔絵業界のお話のまとめ
という訳で似顔絵業界のあれこれのお話でした。
伝わったかわかりませんが、結構壮絶な業界です笑
ですが仕事自体は楽しい仕事だと思います。
似顔絵を描いてもらうことにハマってしまうお客さんもいます。(月に何度も来てくださるリピーター様も結構います)
なのでまだ描いてもらったことがない人は一度経験してみると良いかもです!友達や家族、職場の人へのプレゼントなどにも喜ばれますよ。
そしてこれから似顔絵師を目指す方は、厳しい道のりかもですが、楽しいことも普通の仕事以上にたくさんありますので、是非頑張ってください。
1年で辞めた僕が言うのもなんですが・・・
ちなみに辞めた理由は
上司とトラブルを起こしてしまったからです。
いろいろポンコツだったので・・・。
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