イラストレーターのなり方

アニメの背景制作会社の仕事内容や給与事情、魅力を元社員がお伝えします!

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どんべえ
ゲーム会社勤務の3DCGデザイナー12年目兼イラストレーター。 現家庭用ゲームソフト開発のマップデザイナーをやっております。 業界を目指す人の力になれればと思ってます。
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初めまして、3DCGデザイナーのどんべえと申します!

アニメ業界、ソシャゲ業界、コンソール業界と世話しない木っ端デザイナーです。

そんな私ですが2番目の会社が【アニメの背景美術】の会社でした。

アニメの制作会社の話は皆さんネットなどでよく聞くことと思いますが背景会社のお話ってあんまり聞かないですよね?

なので今回は7年半務めた経験から色々お話していければなぁと思っておりますので最後までお付き合いくださいませ!

※今回は背景の会社でのお話なので、キャラ作画などのお話は出てきませんのでご容赦ください。

 

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背景会社の仕事内容

仕事は大きく分けて3つです。

  1. 背景班
  2. 設定班
  3. 3D班

私が務めていた当時はまだデジタルに移行して少し経ったくらいの時期でしたので、ここにもうひとつ

α:原図(アニメの1カットを一枚の紙の絵にしたもの)をスキャンしてデータ化する事務班もありましたが、昨今は基本全てデータ化されているので、もうないでしょうかね。

 

背景班

言うまでもなく会社でのメインの部署です。

背景班の人たちが描く絵の作画方法には、3パターンありました。

  1. 原図にそってゼロから描き始める方法
  2. 3D班から上がってきた3Dモデルの画像を上からレタッチしていく方法(後述)
  3. もうすでに完成させた絵をコピーや変形をかけて一枚の絵にする方法

上から順に難易度が下がっていきます。

当然のことながらゼロから描くのはとても難しく、時間もかかります。

コレを担当するのは社内でも格段に絵が上手い人たちになります。

現代物(学園物が本当に多い!)ファンタジー、SF、あらゆるジャンルを描けなければいけません。

ただし各ジャンルに強い班などもあるので、そこは適材適所で得意な人に振り分けられていたように思います。

絵を描く人とは別に全体の絵を管理する人もいます。

いわゆる「美術監督」と呼ばれる人です。

当然のことながら絵が上手い人にしか務まりません。

美術監督のお仕事は

●下から上がってきた絵のチェック&リテイク指示&修正
●仕事の割り振り
●監督とのすり合わせ
●監督のイメージを聞いてそれを絵に起こす(色味ボードと呼びます)作業

と本当に多岐に渡ります。

めちゃくちゃ大変で。そして帰れません・・・。

ですが背景会社で働く上で美術監督を目指すことは多くの人の目標でもあります。

 

設定班

ここがピンと来ない人は多いのではないでしょうか?

設定班とは簡単に言うと背景の案を出す部署です。

よくゲームの設定資料集とかにダンジョンや町などの設定画が載っていますよね。

アレですアレ!

監督と打ち合わせを行い、作品に出てくる部屋の間取りや家具の配置などを決め、絵にするのが主なお仕事です。

作品の作画が始まる かなり前段階から仕事が始まります。

なぜならその設定画を元にコンテなども制作されるからです。

設定班の仕事が遅延すると、その1クールのスケジュールそのものが大幅に遅延します。(過去に数回このあおりを食らったことがある)

なので早く、わかりやすく、なおかつ豊富に案を出せなければいけません。

 

3D班

私が所属していた部署です。

会社によっては無かったりします。何せ3Dはお金を食います。

まず上述した”設定班”が書き起こした設定に合わせて3Dモデルを作成していきます。(主に室内や建物の外観などになります)

そして次にその3Dモデルに、美術監督が作成した色味ボードに合わせてテクスチャを作成していきます。

この際注意しなければいけないことは「作りこまない」ことです。

モデル自体はかなり精密に作らなければいけませんが、テクスチャに関してはレタッチを後に行うので下手に描きこみを加えると後々邪魔になります。

フラットなものに仕上げることを求められます。

残念ながら、完成させるのは背景美術なので3Dの人間には作品を”完成”させることは求められません。(これがのちの転職活動に大きく響くことを当時の私は知る由もなかったのである)

そして制作した3Dデータにカメラを置きます。

それぞれの原図に合うようにカメラの位置、角度を調節します。

そのカットで映るキャラと違和感が無いように丁寧に調節をしてカメラを固定。

そしてここから各パーツを個別に出力していきます。

例えば床、天井、柱、ベット、机、椅子etc…

個別で出力された画像をフォトショップ上でレイヤーに分けていきます。

最終的に1枚のPSDデータにして背景班に渡します。

これが一連の流れになります。

 

求められる実力 背景会社に入るには?

制作背景会社が社員に何を求めるか?と言いますと、ズバリ

・実践的なパーステクニックをある程度使いこなせるか
・物体を面で捉えられるか

この2つです。

ここの部分ができるか、できないかで合否が決まります。

 

パースは使いこなせなければ意味が無い

パース知識に関しては基礎的なことはネットを漁ればいくらでも出てくるでしょう。

ですがはっきり言います。

「アレはパーステクニックの氷山の一角でしかない」と…。

少し厳しい話になりますが、ネットや下手な本で手に入れたパースの知識”だけ”ではあまり役には立たないです。

【パースとは”ツール”のこと】です。使いこなさなければ意味がないのです。

是非学んで実践してください。

勿論完璧でないと会社に入れないということはありませんので、ご心配なく。

 

立方体の正面と側面、上面について、面の明暗や反射光が当たる面などについての理解を求められます。

あくまで2Dなので二次元で物を立体的に見せる必要があり、これはその必須スキルと言えます。

これが本当に重要!

究極的に全てのものはこの「面で捉えること」が出来るからです。

例えば空の雲にもこのスキルは適応されます。

私が勤めていた会社は面接に受かった場合一週間のテスト期間がありました。この一週間で上記二つの実力を測るのです。

空、岩、草、木、水、建物など幅広い質感の絵を描かされ、そこに2つのスキルが適用出来ているかで本採用が決まっていました。

これから背景マンとして働きたい人はこの2点は特に重点的に勉強したほうがよいでしょう。

 

労働環境について

皆さんのご想像通り

悪い

です。

アニメ制作会社よりかはマシな方でしょう。(月給制でした。ふつうは歩合制)

しかしながら普通の職種に比べれば悪いと言わざるを得ません。

1日最低12時間。週6勤務、祝日無し、休みは日曜のみなので休日は月に4日しかありませんでした。

ピークで忙しかった時は一日15~6時間くらい働いてましたね…。

そのおかげで見事にうつ病を患ってしまったわけですが。

 

給与、福利厚生

これも言わずもがなですが

凄まじく安い!!!!!!!!

特に入りたては極貧生活をしなければならないくらい安かったです。

大卒新入社員と同じ年収になるのに5年かかりました(苦笑

そして福利厚生など都市伝説ですかってくらいありません。本当になにもありません。

ほぼ9割のアニメ系の会社が、業務委託契約という方法をとっています。

これは何かというと、フリーランスの人間を一か所に集めて受けてきた大量の仕事を分担してやろうねって状態のことです。

つまり「社員」ではないのです。

会社は雇っているわけではないので厚生年金も社会保険も、雇用保険すらも払いません。

すべて自分でやらなければなりません。

雇用保険が無いということは、もし会社を辞めたとして失業保険が受けられないということです。

社会的な補償がほぼないという雇用形態なので辞める時、転職などは計画的に行いましょうね…。

 

背景制作会社で働いて良かったこと

良い面って結構守秘義務に反することが多かったりするので、意外と書けないことがあるんですよね…

例えば私は7年半この業界に居座っていました。

正直かなり長い方に分類されると思います。

その7年半で特に良かったと思えたことは

【有名な人に会えた】

でしょうか。

アニメは1クール、2クールの放送が終了すると必ず打ち上げパーティを行うんです。

そこには当然声優さんがたくさんいらっしゃいます。

アニメ好きにはたまらないでしょうね。

昔はその打ち上げの場所でサインをしてもらうことも可能でした。(途中から禁止になりましたが…)

私はあまり声優に詳しくなかったのですが、実は数多く携わったアニメ作品の中には自分が大好きな原作のアニメ化などもありました。

その原作のキャラデザをした人や、作者様とお会いできたのは今でもはっきりと覚えているくらいうれしかったですね。

 

アニメの仕事は過酷…だけど、

ひとつこの場を借りてお伝えしたいことがあるんです。

よくアニメ業界経験者は目指すべき業種ではないと言います。

まぁそう言いたい気持ちも痛いほどわかります。

ですがあえて私の意見を言わせてもらうなら

”本当にアニメの仕事がしたいなら1回やってみたら良い”

です。

「周りが悪く言うからやっぱり辞めた」っていうのはもったいないですよ。

アニメが好きなら目指せば良いですし、あまりにも耐えられないようなら辞めれば良いだけです。

勿論私のようにうつ病になり、未だに通院を余儀なくされる、というパターンもあるにはあります。

ですが特に後悔はしていません。

だから自分の気持ちに素直になってください。

自分が携わったアニメが地上波で初めて流れた時は感動でしたよ!!!

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